間質性肺炎の血液検査のうち、日本ではKL-6(Krebs von den Lungen-6)が普及しています。
- もともとは肺癌細胞に反応する抗体の一つとして抗KL-6抗体が作製されました。
- その抗体が検出するKL-6が、実は健常人よりも間質性肺炎患者において異常高値を示すことが明らかとなりました。
- その後、KL-6は実は肺ではⅡ型肺胞上皮細胞や気管支上皮細胞の管腔側に発現していることがわかっています。
KL-6の基準値は500 U/ml未満です。
間質性肺炎では上昇することがあり、疾患によっては間質性肺炎の病勢のマーカーとして有用なこともあります。
目次
KL-6
過敏性肺炎
過敏性肺炎の中には、KL-6が季節性に変動するタイプがあることが知られています。
夏や冬のある時期に上昇し、自然に低下する。過敏性肺炎の診断はなかなか難しいことが多いですが、この特徴的なKL-6の上下が診断の一助となることがあります。
特に、過敏性肺炎ではその他の間質性肺炎に比べてKL-6は季節性に変動し、特にトリ関連過敏性肺炎では冬に上昇し、住居関連過敏性肺炎では夏に上昇するようです。(冬:11月から2月、夏:6月から9月)
引用文献:Ohnishi H, et al. BMC Pulm Med 2014;14:129.
過敏性肺炎:トリ関連は冬に、住居関連は夏にKL-6が上昇する | 呼吸器内科専門医の間質性肺炎ブログ
間質性肺炎ではKL-6を測定し、様々な判断に使用しています。 過敏性肺炎において季節性にKL-6が変動するかどうかに関して、2014年に日本からの研究結果が報告されました。 …
全身性強皮症に伴う間質性肺炎
- 全身性強皮症に伴う間質性肺炎の進展リスク:KL-6>1273U/ml
- 全身性強皮症に伴う間質性肺炎:KL-6が肺機能の推移を予測(イギリス)
- 全身性強皮症or混合性結合組織病に伴う間質性肺炎:バイオマーカーとしてのKL-6の可能性
- 全身性強皮症に伴う間質性肺炎:1年間の治療前後のKL-6の推移
皮膚筋炎/多発性筋炎に伴う間質性肺炎
- 皮膚筋炎・多発性筋炎に伴う間質性肺炎の予後予測モデル
- 抗ARS抗体陽性の間質性肺炎では再燃が多く、KL-6のモニタリングが重要である
- 抗ARS抗体陽性の間質性肺炎は、カルシニューリン阻害薬の中止後の再燃に注意
その他
間質性肺炎の重要な合併症の一つに肺がんがありますが、その手術後の急性増悪を予測する指標の一つにもKL-6は用いられています。
また、これまでの報告のほかに、
- 肺がんや膵がん、乳がんのなどの悪性腫瘍
- 感染症(ニューモシスチス肺炎やサイトメガロウイルス肺炎など)
- 肺胞蛋白症
などの間質性肺炎以外でもKL-6は上昇することが知られていますので、注意が必要です。
外来では症状も変わらず、間質性肺炎が安定していても、KL-6が変動することを経験します。KL-6はあくまで一つのバイオマーカーであり、その上下のみで病勢を判断することはできませんが、評価指標の一つとして参考にしています。