間質性肺炎のガイドライン(2022年最新版)

間質性肺炎に関する最新のガイドラインが発表されました。

Idiopathic Pulmonary Fibrosis (an Update) and Progressive Pulmonary Fibrosis in Adults: An Official ATS/ERS/JRS/ALAT Clinical Practice Guideline – PubMed (nih.gov)

2022年5月に間質性肺炎の最新のガイドラインが改訂されました。一世を風靡してまさに現在の間質性肺炎診療の目玉であるPF-ILDですが、早くも名称がPPFに変更する提案がなされています。

背景

この米国胸部学会(ATS)、欧州胸部疾患学会(ERS)、日本呼吸器学会(JRS)、ラテンアメリカ胸部医学会(ALAT)のガイドラインは、これまでの特発性肺線維症(IPF)ガイドラインを更新し、IPF以外の間質性肺疾患(ILDs)の患者における肺線維症の進行について述べた。

方法

ILD の学際的な専門家、方法論者、患者代表からなる委員会が設置された。

  1. IPFの改訂:IPFの画像基準と病理基準をコンセンサスをえて改訂した。クライオバイオプシー、ゲノム分検査、制酸剤、逆流防止手術に関する質問は、システマティックレビューを参考にし、GRADE(Grading of Recommendations, Assessment, Development and Evaluation)アプローチによるエビデンスに基づく推奨で回答された。
  2. 光る電球のイラストPPF(progressive pulmonary fibrosis):PPFを定義した上で、画像および肺機能所見からなる基準をコンセンサスにより決定した。ピルフェニドンとニンテダニブに関する質問は、システマティックレビューで情報を得て、GRADEアプローチによるエビデンスに基づく推奨で答えた。

結果

IPFの改訂

適切な専門知識を有する施設では、クライオバイオプシーを外科的肺生検の代替法として容認できるものと見なすよう、条件付き勧告が行われた。

ゲノム検査については、推奨も反対もされなかった。

IPFの治療法として、制酸剤投与と逆流防止手術に対して、条件付きで推奨された。

IPFの診断確信度。文献より引用掲載
進行性肺線維症(PPF; progressive pulmonary fibrosis)

<PPFの基準>

IPF以外のILD患者において、過去1年以内に以下3つの基準(症状の悪化、画像の進行、肺機能の悪化)のうち少なくとも2つを認め、他の説明がつかないものと定義された。

  1. 呼吸器症状の悪化
  2. 生理学的な病状の進行(以下のいずれか)
    1. 1年以内に%FVCが絶対値で5%以上低下
    2. 1年以内に%DLCO(Hb補正)が絶対値で10%以上低下
  3. 画像での線維化の進行
    1. 牽引性気管支拡張・細気管支拡張の範囲の拡大または重症度の悪化
    2. 牽引性気管支拡張を伴う新たなすりガラス影
    3. 細かい網状影の新規出現
    4. 網状影の範囲の拡大ないし粗大化
    5. 蜂巣肺の出現ないし増加
    6. 肺葉容積減少の増加

ニンテダニブは、IPF以外の線維性ILDの標準的な管理にもかかわらず進行するPPFの治療に提案する(条件付き推奨、低品質のエビデンス)とされ、ピルフェニドンは、その有効性と安全性に関してさらなるデータの蓄積が必要と位置づけられた。
(線維化の進行を認める場合、ニンテダニブはわが国で「進行性線維化を伴う間質性肺疾患」(PF-ILD)として効能又は効果が認められている。ピルフェニドンの保険適応は認められていない。)

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