特発性肺線維症(IPF)は予後不良な間質性肺炎であり、経過がとても重要ですが、どのような死亡の原因が多いのでしょうか。
報告①:北海道スタディの結果
様々な報告がありますが、日本においてまず参考となるのは、2014年に報告された日本のIPFの実態調査を行った研究(いわゆる北海道スタディ)です。
この報告によると、特発性肺線維症の死因は、
1位:急性増悪(40%)
2位:慢性呼吸不全(24%)
3位:肺癌(11%)
で、その後は感染症、心疾患が続きます。
この研究の対象は2003年から2007年までのやや古いデータではありますが、やはり急性増悪が最も多く、死亡原因全体の4割を占める結果となっています。
また、慢性呼吸不全は、特発性肺線維症が進行した結果としての死亡、と考えよいと思いますが、全体の約4人に1人に占めるようです。
間質性肺炎には肺癌の合併が多いことも報告されていますが、間質性肺炎があると肺癌の治療自体も極めて制限されてしまいます。これも死因の第3位にあがりました。
報告②:2020年の日本の単施設からの報告
2020年には日本の単施設から、462例の特発性肺線維症(IPF)の死因が報告されています。
この研究によると、特発性肺線維症約460例の死因は、
1位:慢性呼吸不全(51%)
2位:急性増悪(27%)
3位:肺癌(7%)
であり、その後は感染症、心疾患と続きます。
この研究では、2008年から-2015年の特発性肺線維症を対象としています。
前述の報告は2003年から2007年が対象ですので、最近では急性増悪の死因における割合が減少している可能性があります。
もちろん、その一因には特発性肺線維症の治療薬である抗線維化薬の影響があるかもしれません。
また、急性増悪は以前はとても予後不良な病態でしたが、最近では死亡率も少し改善している可能性も指摘されています。⇒詳しくは、特発性肺線維症(IPF)の急性増悪に対するリコンビナントトロンボモジュリンの効果の記事をご覧ください。
<まとめ>
特発性肺線維症の死亡原因は、慢性呼吸不全や急性増悪が最多であり、その他は10%程度を肺癌が占め、感染症や心疾患も原因となる。
(最終アップデート:2022年1月7日)