ここでは間質性肺炎で使用する各種ガイドラインや重症度分類、診断基準などを、覚え書きとしてまとめています。
覚えるには大変だけど、困ったらここを開けば一目でわかるようなページを目指します。
質問票
修正MRC息切れスケール質問票(mMRC)
Gr0:激しい運動をしたときだけ息切れがある。
Gr1:平坦な道を早足で歩く、あるいは緩やかな上り坂を歩くときに息切れがある。
Gr2:息切れがあるので、同年代の人より平坦な道を歩くのが遅い、あるいは平坦な道を自分のペースで歩いているとき、息切れのために立ち止まることがある。
Gr3:平坦な道を約 100m、あるいは数分歩くと息切れのために立ち止まる。
Gr4:息切れがひどく家から出られない、あるいは衣服の着替えをするときにも息切れがある。
L-PF(living with pulmonary fibrosis)スコア
肺線維症における症状に関する23項目の質問票で、①呼吸困難、②咳嗽、③疲労の3つの領域から構成されるスコア。
0-100の範囲で、高値ほど症状が重いことを示す。
重症度分類
特発性肺線維症 GAP indexと重症度
性別:男性 +1点、女性 0点
年齢:60歳以下 0点、61-65歳 +1点、66歳以上 +2点
FVC:>75% 0点、50-75% +1点、<50% +2点
DLCO:>55% 0点、36-55% +1点、≦35% +2点、施行困難 +3点
0-3点 →ステージⅠ
4-5点 →ステージⅡ
6-8点 →ステージⅢ
ILD-GAP indexと重症度
性別:男性 +1点、女性 0点
年齢:60歳以下 0点、61-65歳 +1点、66歳以上 +2点
FVC:>75% 0点、50-75% +1点、<50% +2点
DLCO:>55% 0点、36-55% +1点、≦35% +2点、施行困難 +3点
膠原病に伴うILD、iNSIP、慢性過敏性肺炎では合計点から2点減点して計算
0-1点 →ステージⅠ
2-3点 →ステージⅡ
4-5点 →ステージⅢ
6-8点 →ステージⅣ
ガイドライン
IPF and PPF, ATS/ERS/JRS/ALAT Clinical Practice Guideline 2022年
SSc-ILD, ATS Clinical Practice Guideline 2024年
SARD-ILD, ACR Guideline 2023年
SARD = Systemic Autoimmune Rheumatic Disease
診断基準・分類基準
全身性強皮症 2013ACR/EULAR分類基準
- 両手におけるMCP関節より近位に及ぶ皮膚硬化 9点
- 手指に限局する皮膚硬化 (点数の高い項目のみ)
- 手指腫脹(Puffy fingers) 2点
- 手指硬化(PIP関節からMCP関節までの皮膚硬化) 4点
- 指尖部病変(点数の高い項目のみ)
- 指尖部潰瘍 2点
- 指尖部潰瘍瘢痕 3点
- 毛細血管拡張 2点
- 爪郭毛細血管異常 2点
- 肺動脈性肺高血圧症または/および間質性肺疾患(最高で 2 点) 2 点
- レイノー現象 3点
- 強皮症関連自己抗体
- 抗セントロメア抗体、抗トポイソメラーゼ I (Scl70)抗体、抗RNA ポリメラーゼⅢ抗体 3点
1)または2)以下で9点以上で全身性強皮症と分類する。
この分類基準を用いたvalidationのための集団の感度・特異度はそれぞれ91%、92%。
シェーグレン症候群 2016ACR/EULAR分類基準
以下の項目の合計点が4点以上で一次性シェーグレン症候群と分類できます。
- 口唇唾液腺の巣状リンパ球性唾液腺炎でfocus score ≧ 1foci/4mm2 3点
- 抗SS-A/Ro抗体陽性 3点
- 少なくとも一方の目で角膜染色検査スコア ≧ 5点(あるいはローズベンガル試験 ≧ 4点) 1点
- 少なくとも一方の目でシルマー試験 ≦ 5mm/5分 1点
- 無刺激唾液分泌量 ≦ 0.1mL/分 1点
この分類基準を用いる際には、以下のinclusion criteriaを1つ以上満たし、exclusion criteriaに該当しない症例を対象とする前提がある点は注意が必要です。
この分類基準を用いたvalidationのための集団の感度は96%(95%信頼区間 92-98%)、特異度は95%(95%信頼区間 92-97%)でした。
IPAF(アイパフ、interstitial pneumonia with autoimmune features)
膠原病の分類基準は満たさないが、膠原病の匂いのする間質性肺炎を現在ではIPAF(アイパフ、interstitial pneumonia with autoimmune features)として考える概念が2015年に報告されました。
IPAFと分類するためには、臨床的ドメイン、血清学的ドメイン、形態学的ドメインの3つのドメインのうち、少なくとも2つ以上のドメインを満たす必要があります。以下にそれぞれのドメインに含まれる項目を提示します(実際に用いる際には元論文を参考にしてください)。
A. 臨床的ドメイン
- 機械工の手(mechanic hands)
- 指先潰瘍
- 関節炎、または、多関節の朝のこわばり(60分以上)
- 手掌の毛細血管拡張症
- レイノー現象
- 原因不明の手指の浮腫
- ゴットロン徴候
B. 血清学的ドメイン
- 抗核抗体320倍以上 diffuse, speckled, homogeneousパターン
またはNucleolarパターン(力価を問わない)
またはCentromereパターン (力価を問わない) - リウマトイド因子が正常上限の2倍以上
- 抗CCP抗体
- 抗ds-DNA抗体
- 抗SS-A / Ro抗体
- 抗SS-B / La抗体
- 抗RNP抗体
- 抗Sm抗体
- 抗トポイソメラーゼ (Scl-70)抗体
- 抗ARS抗体 (例えばJo-1, PL-7, PL-12, EJ, OJ, KS, Zo, tRS)
- 抗PM-Scl抗体
- 抗MDA5抗体
C. 形態学的ドメイン
- HRCTによる画像パターン
NSIP、OP、NSIP with OP overlap、LIP - 外科的肺生検による病理パターン
NSIP、OP、NSIP with OP overlap、LIP
胚中心を伴う間質のリンパ球集簇
びまん性のリンパ球・形質細胞浸潤(リンパ濾胞の有無は問わない) - マルチコンパートメントの関与(間質性肺炎の所見に加えて)
原因不明の胸水または胸膜肥厚
原因不明の心嚢水または心膜肥厚
原因不明の気道病変(呼吸機能検査、画像、病理検査で評価)
原因不明の肺血管障害
アレルギー性気管支肺真菌症(ABPM)の診断基準(2021年)
- 喘息の既往あるいは喘息様症状あり
- 末梢血好酸球数≥500/mm3
- 血清総IgE値≥417IU/mL
- 糸状菌に対する即時型皮膚反応あるいは特異的IgE陽性
- 糸状菌に対する沈降抗体あるいは特異的IgG陽性
- 喀痰・気管支洗浄液で糸状菌培養陽性
- 粘液栓内の糸状菌染色陽性
- CTで中枢性気管支拡張
- 粘液栓喀出の既往あるいはCT・気管支鏡で中枢気管支内粘液栓あり
- CTで粘液栓の濃度上昇(HAM、CT値≧70HU)
6項目以上を満たす場合にABPMと診断する(感度94~96%、特異度90%)。
Asano K, et al. New clinical diagnostic criteria for allergic bronchopulmonary aspergillosis/mycosis and its validation. J Allergy Clin Immunol 2021;147:1261–1268.e5.