過敏性肺炎の患者では膠原病の自己抗体を有することが報告されていますが、さらに遺伝的背景との関連を検討した重要な研究が報告されました。
一言解説
過敏性肺炎の約3人に1人の割合で何らかの自己抗体を有し、遺伝的背景が自己抗体陽性や高い死亡率と関連する可能性がある。
さらに詳しく解説(専門的な内容です)
背景
過敏性肺炎は、有機物粒子への曝露によって引き起こされる免疫介在性の疾患である。過敏性肺炎の患者の中には、自己免疫疾患の臨床症状の有無にかかわらず、自己抗体を発現するサブグループが存在することが報告されている。
しかし、この過程に関与するメカニズムや、自己抗体が過敏性肺炎の臨床経過に及ぼす影響については不明である。
研究目的:自己抗体の有無にかかわらず、ヒト白血球抗原(HLA)クラスII対立遺伝子と過敏性肺炎患者との関連を検討した。
方法
170名の過敏性肺炎患者を対象とした。診断時の抗核抗体、リウマトイド因子、抗SSA/Ro、抗SSB/La、抗CCPの有無について分析した。さらに、一部の患者では、抗Scl-70、抗好中球細胞質抗体、および抗DNAを評価した。
HLAタイピングは、HLA-DRB1およびHLA-DQB1遺伝子座を含む高解像度モダリティのPCR配列特異的プライマーを用いて実施された。統計解析は、Epi-Info v7とSPSS v20を使用して行った。
結果
170例の過敏性肺炎のうち、60名には血清自己抗体が認められ(35%、HPAbs+)、110名には認められなかった(HPAbs-)。
HPAbs+群ではHLA-DRB1*03:01対立遺伝子の頻度が著しく高かった(10.8% vs 0.45%; OR 30.14, 95%CI 3.83-237.1; p=0.000165, Bonferroniの補正後)。
同様に、自己免疫疾患の主要な遺伝的決定因子である8.1 ancestral haplotypeの一部であるhaplotype DRB1*03:01-DQB1*02:01は、自己抗体発症の有意なリスクをもたらすことがわかった(OR 19.23, 95%CI 2.37-155.9; Bonferroniの補正後p=0.0088)。
さらに、HLA-DRB1*03:01対立遺伝子は、過敏性肺炎患者の高い死亡率と関連していた(調整後OR 5.9, 95% CI 1.05-33.05; p=0.043)。
<まとめ>
過敏性肺炎の一部では自己抗体陽性を示し、8.1 ancestral haplotypeの複数の対立遺伝子は自己抗体陽性や高い死亡率と関連がある。