特発性肺線維症のうち約40%が過敏性肺炎の可能性

 

過敏性肺炎の診断ガイドラインが2020年に報告され(⇒「過敏性肺炎の診断ガイドライン2020」)、日本からも新たに過敏性肺炎診療指針2022が報告されました。しかし、まだまだ過敏性肺炎の診断は難しい問題で、特に特発性肺線維症(IPF)との鑑別は非常に悩ましいことも多いと思います。

 

2013年には特発性肺線維症と診断した46例を対象とした研究がスペインから報告されています。

Morell F, et al. Chronic hypersensitivity pneumonitis in patients diagnosed with idiopathic pulmonary fibrosis: a prospective case-cohort study. Lancet Respir Med 2013;1:685–94.

 

一言解説

間質性肺炎において羽毛布団使用などの環境曝露を詳細に聴取することは非常に重要であり、専門施設でも追加病歴聴取や追加検査により特発性肺線維症の約40%が過敏性肺炎に再診断されることがある。

 

 

 

さらに詳しく解説(専門的な内容です)

背景

特発性肺線維症(IPF)と慢性過敏性肺炎の臨床的特徴は区別できないことがあり、IPFが疑われる患者の診断評価において、肺線維症を引き起こすとされる環境因子を排除する必要性が明らかにされている。

研究目的:IPFと診断された患者の環境中に潜む抗原を、従来用いられてきた検査以外の方法で調べること。

 

方法

2000年米国胸部疾患学会(ATS)および欧州呼吸器学会(ERS)の診断基準に基づいてIPFと診断された連続60例を対象に、2004年1月1日から2009年12月31日までの6年間、4ヶ月ごとに前向きに追跡調査を行った。

過敏性肺炎を引き起こすことが知られている抗原の潜伏曝露を特定するために、これらの60人の患者に対して、毎回、統一された質問票を実施した。

患者は、特異的IgG測定、気管支肺胞洗浄、疑わしい抗原による気管支チャレンジテスト、および既存の肺生検サンプルとその後得られた外科的肺生検サンプルおよび肺切除片の病理組織学的特徴の再確認を受けた。

患者の環境から採取された疑わしい検体は、微生物学研究室で培養された。

これらの臨床データとIPFに精通した呼吸器科医や放射線科医との話し合いにより、2011年ATS、ERS、日本呼吸器学会、中南米胸部学会のガイドラインに従って診断を確定した。60例中46例が2011年ガイドラインに基づくIPFであり、本研究ではこの46例を中心に解析を実施した。

 

結果

2011年ガイドラインによるIPF患者46例中20例(43%、95%CI 29-58)は、その後慢性過敏性肺炎と診断された。

  • 9人は気管支チャレンジテストが陽性で(うち8人はIgG陽性で、このうち6人は外科的肺生検で慢性過敏性肺炎と一致するパターンを示した)、7人はIgG陽性に加えて外科的肺生検で過敏性肺炎と一致する病理組織を有していた。
  • 1人はIgG陽性で気管支肺胞洗浄液中のリンパ球が20%以上、3人は外科的肺生検で亜急性過敏性肺炎に一致する所見があった(IgGも陽性)。
  • 特発性肺線維症の患者に、改めて詳細な病歴聴取を行ったところ、全体の35%(16/46例)に羽毛布団使用歴があった。
  • 2011年の基準を満たしIPFと診断された患者46人のうち29人は、研究期間中に病理組織検査が可能な肺組織(28人は外科的肺生検、2人は摘出肺、うち1人は外科的生検)を有しており、慢性過敏性肺炎の患者20人のうち16人は外科的肺生検でこの診断と一致する病理組織学的特徴を有していた。

 

光る電球のイラスト最終的には、

  • 羽毛布団使用歴のある特発性肺線維症の63%(10/16例)
  • 羽毛布団使用歴のない特発性肺線維症の33%(10/30例)

が過敏性肺炎と診断された。

つまり、全体では43%(20/46例)が特発性肺線維症から過敏性肺炎に再診断されたようです。

 

 

<まとめ>

2011年基準で診断されたIPFの羽毛布団使用率は3人に一人であり、詳細な病歴聴取や追加検討により全体の約40%が過敏性肺炎に再診断された。

 

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(最終アップデート:2022年05月16日)

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