在宅酸素療法はどのような患者にすすめるべきか、2020年ATSガイドラインから参照①

2020年にアメリカ胸部医学会(ATS)から在宅酸素療法についてのガイドラインが提唱されました。

Jacobs SS, et al. Home Oxygen Therapy for Adults with Chronic Lung Disease. An Official American Thoracic Society Clinical Practice Guideline. Am J Respir Crit Care Med 2020;202:e121–41.

間質性肺炎に関しては、以下の2つの項目について解説されています。

  1. 安静時に重度の低酸素がある場合、在宅酸素療法は勧められるか。
  2. 労作時に重度の低酸素がある場合、労作時のみの酸素療法は勧められるか。

本日は、この項目①について解説します。

安静時に重度の低酸素がある場合、在宅酸素療法は勧められるか。

間質性肺炎の患者では、進行すると安静時に酸素が不足する状態、安静時低酸素を認める場合があります。

このガイドラインでの「重度の低酸素」として用いている定義は以下の通りです。

重度の低酸素の定義

  1. PaO2≤55mmHgもしくはSpO2≤88%
  2. PaO2 56-59mmHgもしくはSpO2 89%かつ以下のいずれかを満たす:浮腫、Hct≧55%、心電図で肺性P波

このような患者に酸素投与を行うべきか、明確なエビデンスがあるわけではありません。COPD(Chronic Obstructive Pulmonary Disease、慢性閉塞性肺疾患)のエビデンスを参照にしつつ、以下のようにコメントされています。

ATSの推奨

  • 在宅酸素療法(少なくとも1日15時間以上)をすすめる
    • strong recommendation
    • very-low-quality evidence

安静時低酸素のある間質性肺炎患者に酸素投与をすることは、感覚的にはよいように思います。しかし、そのエビデンスは確立していないことは覚えておく必要があり、上記のような基準をもとに、個々の患者に応じた適切な在宅酸素療法が提案できるようにしていきたいと思います。

<まとめ>

間質性肺炎患者で重度の安静時低酸素がある場合、長時間の在宅酸素療法をすすめる。しかし、その根拠は乏しく、今後の検証がまだ必要である。

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