全身性強皮症に伴う間質性肺炎に対する有名なランダム化比較試験に、
Scleroderma Lung Study(SLS)があります。
Scleroderma Lung Study Ⅰ(SLSⅠ)の概要です▼
P:全身性強皮症に伴う間質性肺炎の患者
I:経口エンドキサン(最大2mg/kg/day)を12か月間投与
C:プラセボ
O:12か月後の努力肺活量(FVC)の予測値の差
→結果:経口エンドキサン投与群はプラセボ群に比較して、努力肺活量(FVC)の低下を2.53%抑制(絶対値)
続くランダム化比較試験として、ミコフェノール酸モフェチル内服(MMF、商品名:セルセプト)と経口エンドキサン(CYC)を比較したScleroderma Lung Study Ⅱ(SLSⅡ)の結果が、2016年に報告されました。
この試験の対象患者は以下の通りです。
- 18-75歳の全身性強皮症
- 努力肺活量(FVC)が45%から85%
- 労作時息切れ(BDIでGrade2以上)
- 胸部CT検査ですりガラス影あり
- レイノー現象以外の全身性強皮症の症状出現から7年未満
除外基準として、FEV1/FVCが65%未満、心エコーや右心カテーテル検査で肺高血圧症あり、肺拡散能力(DLCO)が40%未満、過去6か月の期間に喫煙歴があり、過去に8週以上のエンドキサン内服もしくはミコフェノール酸モフェチル内服歴ありや2回以上のエンドキサン間欠静注療法(IVCY)あり、割付30日以内のエンドキサンかミコフェノール酸モフェチル内服治療歴あり、過去に疾患修飾療法の治療歴あり、などが挙げられています。
これらの患者を、
ミコフェノール酸モフェチル内服(MMF)を24か月内服した群と、
12か月間経口エンドキサン(CYC)を内服しその後12か月間プラセボを内服した群
に割付けて、
3-24か月の努力肺活量(FVC)を比較
しています。
下図は英語ではありますが、試験デザインの概要です。
(SclerodermaLungStudy.orgより転載)
参考までに、PICOで書くと以下の通りになります。
P:全身性強皮症に伴う間質性肺炎の患者、I:MMF 24か月、C:CYC 12か月、その後プラセボを12か月間内服、O:3から24か月の努力肺活量(FVC)
<結果>
本試験に登録された患者背景は以下の通りです。
- 対象:142例
- 平均年齢はおよそ52歳、女性が74%
- びまん皮膚硬化型が59%
- 全身性強皮症の罹病期間がおよそ2.6年
- 努力肺活量(FVC)が67%程度、肺拡散能力(DLCO)が54%程度
これらの患者に、ミコフェノール酸モフェチル内服(MMF)を24か月内服、もしくは12か月間経口エンドキサンを内服しその後12か月間プラセボを内服したところ、
24か月間の努力肺活量(FVC)の経過は、両群で差は認めませんでした(p=0.24)。
24か月時点の努力肺活量(FVC)の改善率は、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)群で+2.19%、経口エンドキサン群で+2.88%であったようです。
また、治療中止に関しては、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)群が20例、経口エンドキサン群が36例であり、経口エンドキサン群で多い結果でした。
また両薬剤の主な治療中止の理由は以下の表の通りですが、副作用中止がエンドキサン群で多い印象です。
特に、白血球減少や血小板減少は、経口エンドキサンに比してミコフェノール酸モフェチル(MMF)は低頻度に留まりました。
本試験の結果により、全身性強皮症に伴う間質性肺炎の患者においては、ミコフェノール酸モフェチルは経口エンドキサンと同程度の効果があり、副作用が少ない可能性が示されました。