SLSⅠ:強皮症に伴う間質性肺炎に対する経口エンドキサン投与の有効性

全身性強皮症に伴う間質性肺炎に対する有名なランダム化比較試験に、

Scleroderma Lung Study(SLS)があります。

2021年9月現在、Scleroderma Lung Study Ⅲの結果を待っていますが、2006年にはこのScleroderma Lung Study Ⅰ(SLSⅠ)として、経口エンドキサン(cyclophosphamide; CYC)とプラセボを比較したランダム化比較試験の結果が報告されています。

Tashkin DP, et al. Cyclophosphamide versus placebo in scleroderma lung disease. N Engl J Med 2006;354:2655–66.

この試験の対象患者は以下の通りです。

  • 全身性強皮症
  • 活動性の胞隔炎あり(気管支肺胞洗浄で好中球分画3%以上か好酸球分画2%以上、もしくは胸部CT検査)
  • 肺野すりガラス影あり
  • レイノー現象以外の全身性強皮症の症状出現から7年未満
  • 努力肺活量(FVC)が45%から85%
  • 労作時息切れ(BDIでGrade2以上)

除外基準として、肺拡散能力(DLCO)が30%未満、過去6か月の期間に喫煙歴があり、他の重篤な呼吸器合併症あり、治療の必要な肺高血圧症あり、プレドニン10mg以上内服、過去に4週以上のエンドキサン内服歴ありや2回以上のエンドキサン間欠静注療法(IVCY)あり、過去に疾患修飾療法の治療歴あり、が挙げられています。

下図は英語ではありますが、試験デザインの概要です。

f:id:fibrosis:20210930212811p:plain

(SclerodermaLungStudy.org (ucla.edu)より転載)

参考までに、PICOで書くと以下の通りになります。

P:全身性強皮症に伴う間質性肺炎の患者、I:経口エンドキサン(最大2mg/kg/day)を12か月間投与、C:プラセボ、O:12か月後の努力肺活量(FVC)の予測値の差

<結果>

本試験に登録された患者背景は以下の通りです。

  • 対象:158例
  • 平均年齢はおよそ48歳、女性が70%
  • びまん皮膚硬化型が60%
  • 全身性強皮症の罹病期間がおよそ3.2年
  • 努力肺活量(FVC)が68%程度、肺拡散能力(DLCO)が47%程度

これらの患者に経口エンドキサンを12か月間投与しました。

その結果、経口エンドキサン投与群では、プラセボ群に比較して、努力肺活量(FVC)の低下を2.53%抑制(絶対値)しています(95%信頼区間0.28-4.79、p<0.03)。

ただし、経口エンドキサン投与群でも努力性肺活量(FVC)は49.3%で改善、50.7%で悪化しており(下図)、平均値でみると67.6%から66.6%に微減している点は注意が必要です。

f:id:fibrosis:20210927191606p:plain

さらにこの効果は治療開始後2年時点でも継続していたようです。

このランダム化比較試験の結果により、労作時呼吸困難を有し胞隔炎のある全身性強皮症患者に対して、経口エンドキサン1年間投与の短期的な有益性が示されました。

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