IPFの急性増悪に対するリコンビナントトロンボモジュリンの効果

特発性肺線維症(IPF)の急性増悪に対するリコンビナントトロンボモジュリン(商品名:リコモジュリン)についての報告です。有効性が乏しいとする結果でしたが、何より世界で初めて急性増悪に対するランダム化二重盲検プラセボ対照試験を日本で行えたことが大変すばらしいと思います。
Kondoh Y, et al. Thrombomodulin Alfa for Acute Exacerbation of Idiopathic Pulmonary Fibrosis. A Randomized, Double-Blind Placebo-controlled Trial. Am J Respir Crit Care Med 2020;201:1110–9.

さらに詳しく解説(専門的な内容です)

背景

特発性肺線維症の経過中に発症する急性増悪は予後不良である。

急性増悪の病態には、凝固異常と内皮障害が関与しているといわれているが、リコンビナントトロンボモジュリンは、ヒト可溶性トロンボモジュリンの遺伝子組換え体であり、抗凝固作用および抗炎症作用を有する。

研究目的:特発性肺線維症の急性増悪に対するリコンビナントトロンボモジュリンの有効性と安全性をプラセボと比較して検討する。

方法

日本の27施設の患者を対象に行われた、無作為化二重盲検プラセボ対照第3相試験。

リコンビナントトロンボモジュリン投与群(380 U/kg/day、14日間点滴静注)とプラセボ群とに1対1に割付され、90日の生存率を比較。すべての被験者に高用量のコルチコステロイド療法が行われた。

結果

82人の無作為化被験者のうち、77人が試験を完了し、全解析セットに含まれた(リコンビナントトロンボモジュリン40人、プラセボ37人)。

リコンビナントトロンボモジュリン投与群の90日生存率は72.5%

プラセボ投与群の90日生存率は89.2%

であり、その差は-16.7%(95%CI: -33.8 ~ 0.40%;P = 0.0863)でリコンビナントトロンボモジュリンは急性増悪後90日生存率を改善しなかった。酸素化の推移も両群で差はない。

安全性集団(n = 80)において、出血性有害事象はリコンビナントトロンボモジュリン群(42例中10例、23.8%)およびプラセボ群(38例中4例、10.5%)で発生した。

この試験ではリコンビナントトロンボモジュリンの効果は実証されませんでしたが、注目すべきは、今回の対象群における急性増悪の生存率の高さです。

今回の治験に含まれた患者の急性増悪後の90日生存率はなんと81%と、とてもよい結果でした。これは実臨床の患者とは背景が異なる可能性はありますが、急性増悪に対する日本の医療現場における治療戦略や管理体制の向上が期待される結果となりました。

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