経気管支肺凍結生検(COLDICE試験)

気管支鏡での肺生検は昔から行われていますが、採取できる組織の大きさが問題でした。最近ではより大きな組織が採取可能なクライオバイオプシー(TBLC、経気管支肺凍結生検)が行われるようになり、少しずつその有用性と限界が明らかとなっています。
このTBLCと外科的肺生検(SLB)の診断精度を比較した有名なCOLDICE試験について解説します。
Diagnostic accuracy of transbronchial lung cryobiopsy for interstitial lung disease diagnosis (COLDICE): a prospective, comparative study

気管支鏡で肺の組織を調べるための新たな方法である経気管支肺凍結生検は、従来の手術よりも低侵襲であり、診断に関しても比較的有用です。

さらに詳しく解説(専門的な内容です)

背景

経気管支肺凍結生検(TBLC)は、間質性肺疾患診断のための肺組織サンプリングの新しい技術である。

目的:低侵襲な生検手段としてTBLCが臨床で使用されつつある中で、外科的肺生検(SLB)と比較したTBLCの診断精度を確立すること

方法

COLDICEは、オーストラリアの9つの三次病院において、TBLCとSLBの診断上の一致を調査する前向き多施設共同の診断精度に関する研究である。

  • 18歳から80歳までの間質性肺疾患の患者を対象とし、ベースラインでの詳細な評価の後、診断補助のために病理組織学的評価が必要な患者を組み入れた。
  • 多職種による集学的検討(MDD)でスクリーニングを行った後、肺生検の対象となった間質性肺疾患患者は、麻酔下で順次TBLCとSLBを受けた。
  • 各組織試料には1〜130の番号が割り当てられ、コンピュータで作成されたランダムな順序で割り当てられた。
  • コード化された生検サンプルは、病理医によって分析された。
  • その後のMDDでは臨床データおよび放射線データとともに、TBLCまたはSLBのいずれかと無作為に非連続で2回議論された。

主要評価項目
definiteまたはprobableの通常型間質性肺炎(UIP)パターン、indeterminate for UIPパターン、alternative diagnosisに対するTBLCとSLBの病理組織学的特徴の一致、およびMDDでのTBLCとSLBによる診断の一致とした。

結果

2016年3月15日~2019年4月15日に、65の患者(男性31名[48%]、女性34名[52%]、平均年齢66.1歳[SD 9.3]、努力肺活量(FVC)83.7%[SD 14.2]、肺拡散能力(DLCO)63.4%[SD 12.8])を登録した。
TBLC (7.1 mm, SD 1.9) SLB (46.5 mm, 14.9) はそれぞれ同側の2つの葉から採取した。

TBLCとSLBの病理組織学的一致率は70.8%(weighted κ 0.70、95%CI 0.55-0.86)。

MDDでの診断的一致率は76.9%(κ 0.62、0.47-0.78)。

・MDDでdefinite or high confidenceのTBLC(65例中39例[60%])については、37例(95%)がSLBの診断と一致した。
・TBLCの診断がlow confidence or 分類不能であった65例中26例(40%)では、SLBによって6例(23%)が他のhigh confidenceまたはdefiniteのMDD診断に再分類された。

TBLCにより14例(22%)に軽度-中等度の気道出血が発生した。
90日死亡率は2%(65例中1例)であり、特発性肺線維症の急性増悪であった。

<まとめ>

TBLCとSLBは病理所見とMDD診断で75%前後の一致率を示した。特にhigh confidenceもしくはdefiniteで診断されたTBLC症例については、SLBと95%と極めて高い一致率であった。

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