特発性肺線維症(IPF)患者の重要な合併症に肺癌がありますが、間質性肺炎があると使用可能な抗がん剤の種類も限られます。さらにニンテダニブの併用による効果も期待されており、今回日本の多施設研究から、最新のIPF合併肺癌の治療に関する知見が報告されました。
一言解説
IPFに合併した肺癌に対する抗癌剤治療にニンテダニブを併用する期待はあるが、今回の試験結果からは主要評価項目は達成されなかった。
さらに詳しく解説(専門的な内容です)
背景
特発性肺線維症(IPF)は、肺がんの独立した危険因子として関与している致死的な肺疾患である。しかし、IPFを有する進行肺癌に対する最適な治療法はまだ確立されていない。
IPFを有する非小細胞肺癌(NSCLC)に対するニンテダニブ+化学療法(介入群)の有効性と安全性を、化学療法単独(標準治療群)と比較する無作為化第3相試験を実施した。
方法
化学療法未実施のIPFを有するNSCLC患者を、カルボプラチン(1日目のAUC6 6)+アルブミン懸濁型パクリタキセル(1、8、15日目に100 mg/m2)を3週間ごとの投与と、ニンテダニブ(150 mg 2錠分2)投与の併用または非併用に割り付けた。主要評価項目は、無急性増悪生存期間(EFS, exacerbation-free survival)でした。
結果
2017年5月から2020年2月までに、243名の患者が登録された。
EFS中央値はニンテダニブ+化学療法群で14.6カ月、化学療法群で11.8カ月(HR, 0.89;90% CI, 0.67-1.17;p=0.24)、無増悪生存期間(PFS)中央値はそれぞれ6.2カ月、5.5カ月(HR, 0.68;95% CI, 0.50-0.92 )であった。
非扁平上皮癌(HR, 0.61; 95% CI, 0.40-0.93)およびGAPステージI(HR, 0.61; 95% CI, 0.38-0.98)でニンテダニブにより全生存期間が改善された。
240例中7例(2.9%)が試験治療中に急性増悪を経験した。
<まとめ>
本試験の主要評価項目は達成されなかった。しかし、カルボプラチン+アルブミン懸濁型パクリタキセルは、IPFを有する進行NSCLC患者に対して有効であり、忍容性があることが確認された。さらに、ニンテダニブとこのような化学療法との併用は、非扁平上皮癌の患者において全生存期間を改善した。
(最終アップデート:2022年12月12日)