間質性肺炎の中で進行性に線維化が悪化する一群をPF-ILDと呼び、この患者を対象としたINBUILD試験が2019年に報告されました。その日本人の結果をまとめたサブグループ解析が報告されています。
進行性線維化をきたす間質性肺炎(PF-ILD)に対するニンテダニブの疾患進行抑制効果が報告されましたが、日本人のサブグループ解析でも同様の効果と安全性でした。
さらに詳しく解説(専門的な内容です)
背景
進行性線維化性間質性肺疾患(ILD)に対するニンテダニブの有効性は、無作為化二重盲検プラセボ対照のINBUILD試験で実証された。本サブグループ解析では、日本人集団におけるニンテダニブの有効性と安全性を評価した。
方法
進行性線維化性ILD患者を、ニンテダニブ150mg1日2回投与群とプラセボ群に無作為(1:1)に割り付け、最後の患者が52週間を終えるまで治療を継続した。
- このサブグループ解析の対象:日本人患者108名
主要評価項目:52週間にわたる強制換気量(FVC)の年間減少率
ILDの急性増悪または死亡が発生するまでの期間と、最後の患者が52週目の受診を終えるまでの死亡までの期間も評価した。
結果
日本人患者における52週間のFVC低下率(mL/年)は、-148.31(ニンテダニブ)、-240.36(プラセボ)、調整後差分:92.05(95%CI:-10.69-194.80)であった。
- 非日本人では-67.41(ニンテダニブ)、-177.65(プラセボ)、調整後差は110.24 (95% CI: 64.97-155.52) であった。
日本人サブグループと非日本人サブグループ間の治療効果の異質性は認められなかった(治療-サブグループ間相互作用、p=0.75)。
日本人患者における急性増悪または死亡(ハザード比、0.30[95%CI:0.10-0.91])および死亡(ハザード比、0.54[95%CI:0.14-2.11])のリスクはニンテダニブがプラセボより低かった。安全性については、新たな知見や予期せぬ所見はなかった。
まとめ
日本人患者において、ニンテダニブはプラセボと比較して、FVCの年間減少率を低下させることにより、ILDの進行を遅らせることが証明された。日本人患者におけるニンテダニブの有効性と安全性は、INBUILDの全患者と一致していた。