IPF急性増悪に対するステロイドは有効でない可能性

特発性肺線維症(IPF)の急性増悪の治療については、まだ議論の余地があるものの、高用量ステロイドや免疫抑制剤が選択されていることが多いと思います。

そのような現状の中で、急性増悪に対するステロイド治療に関する研究がアメリカから報告されました。
Farrand E, et al. Corticosteroid use is not associated with improved outcomes in acute exacerbation of IPF. Respirology 2020;25:629–35.

これまでIPFの急性増悪に対するステロイド治療がよいとする報告が多いなか、この分野にさらなる議論を促す報告です。

さらに詳しく解説(専門的な内容です)

背景と目的

急性増悪はIPF関連死亡の約半数を占め、予後に重大な影響を及ぼす。しかし、臨床的に重要な合併症にもかかわらず、管理決定の指針となるデータは限られている。

副腎皮質ステロイドは急性増悪の際に用いられる治療ではあるが、高いエビデンスがなく副作用も多い。そこでIPFの急性増悪に対するステロイド治療が院内死亡率に及ぼす影響を検討した。

方法

UCSF医療センターの電子カルテにおいて、2010年1月1日から2018年8月1日までのIPF急性増悪の患者をコードベースのアルゴリズムを用いてレトロスペクティブに特定した。

副腎皮質ステロイド治療と院内死亡率の関係は、適応症による交絡を制御するためにCoxモデルおよび傾向スコアを用いて評価した。

副次的アウトカムとして院内再入院率や全生存率を解析した。

結果

合計82例のAE-IPFが同定され、そのうち37例(45%)がステロイドを投与されていた。

  • 副腎皮質ステロイドを投与されたIPF急性増悪の患者は、ICUレベルのケアと人工呼吸器管理を必要とする傾向があった。

副腎皮質ステロイド治療と院内死亡率との間に統計的に有意な関連は認められなかった(傾向スコアによる重み付け、調整後HR:1.31、95%CI:0.26-6.55、P = 0.74)。

副腎皮質ステロイドを投与された患者で全生存率は低下した(HR:6.17、95%CI:1.35-28.14、P = 0.019)。

まとめ

少数例の後方視的な研究であり、ICD10から抽出したデータであること、急性増悪の定義が不明確であることなど様々な議論の余地はある。しかし、これまでIPFの急性増悪に対するステロイド治療がよいとする報告が多いなか、この分野にさらなる議論を促す報告であった。

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