間質性肺疾患の重要な合併症に急性増悪があります。急性増悪は、間質性肺炎の経過中に、急激な呼吸状態の悪化を示し、短期間で死亡に至る可能性がある病態です。
急性増悪に関してはこちらの記事もご覧ください。
急性増悪がどのような患者に起こすのか、予測することは非常に困難です。しかし、日本からディープラーニングを用いた急性増悪の予測モデルを開発した大変重要かつ画期的な研究結果が報告されました。
背景
■ 間質性肺疾患(ILD)の一部は高い死亡率を示すか、急性増悪(AE)を経験し、それが死亡率をさらに増加させる。
■これらの高リスク患者を早期に特定し、これらの重要なイベントの発症を正確に予測することは、治療戦略を決定する上で重要である。
■ILD患者の疾患挙動に影響を与える要因が多数存在するため、これらのイベントの正確な予測は困難であるが、縦断的な情報を利用することで予測精度が向上する可能性がある。
目的
■ 縦断的データを用いてAE-ILDおよび死亡の初回発生を複合アウトカムとして予測するディープラーニング(DL)モデルを開発すること。
方法
■2008年1月から2015年12月までに2つの専門センターで登録されたILD患者から縦断的な臨床データおよび環境データを後ろ向きに収集。
■患者の80%を使用してDLモデルを開発し、残りの20%および第2センターのデータで検証を実施。
■開発したモデルをILD-GAPスコアを用いた単変量および多変量Cox比例ハザードモデル(CPHモデル)と比較。
結果
■登録された1,175人の患者のうち、218人がAE-ILDを発症し、380人がAE-ILDを発症せずに死亡。
■12、24、36か月以内の複合アウトカムに対する単変量/多変量CPHモデルのC-index値は、内部検証でそれぞれ0.789/0.843、0.788/0.853、0.787/0.853、外部検証で0.650/0.718、0.652/0.756、0.640/0.756。
■DLモデルは、12か月以内の複合アウトカム予測で単変量および多変量CPHモデルを上回り、内部検証でそれぞれ0.842、0.840、0.839、外部検証で0.803、0.744、0.746のC-index値を示した。
■好中球、CRP、ILD-GAPスコア、および浮遊粒子状物質への曝露が複合アウトカムに強く関連していた。
結論
■DLモデルは、縦断的データを使用してAE-ILDまたは死亡の発生を正確に予測できる。