間質性疾患の患者さんに肺移植は条件を満たす場合には治療選択の一つとなりえます。しかし、今回、米国からなんと急性増悪中の肺移植に関する研究が報告されました。なんと肺移植までの待機期間は10日間。まだ日本では難しい領域です。
一言解説
間質性肺疾患の急性増悪中の治療として、海外では肺移植が治療選択肢となる場合もあるが、まだ日本では難しい。
さらに詳しく解説(専門的な内容です)
背景
間質性肺疾患の急性増悪(AE-ILD)は、有効な内科的治療法がなく、高い死亡率を有している。肺移植はAE-ILD 患者を救命し得る治療選択肢であるが、その役割は十分に確立されていない。
本研究の目的:急性増悪時の肺移植が、安定期の肺移植と比較して、移植後の転帰に影響を与えるかどうかを明らかにすること。
方法
2015 年から2018年に当院に入院した AE-ILD の患者を対象に後方視的研究を行った。比較対象は同期間に肺移植登録を行った安定期の ILD(stable ILD)とした。
主要評価項目:AE-ILD で入院した患者の院内死亡率、移植患者の1年生存率とした。
結果
AE-ILD で入院した 53 例のうち、28 例は内科的治療のみで、25 例は肺移植を受けた。
移植を受けたAE-ILD患者は全例が退院まで生存したが、内科的治療を受けたAE-ILD患者で退院まで生存していたのは 43%であった。
同期間中に 67 人のstable ILD 患者が移植を受けていた。
移植患者の1年生存率は、AE-ILD群と stable ILD 群で差がなかった(96% vs 92.5%)。
原発性移植片機能不全、移植後入院期間、急性細胞性拒絶反応の発生率は両群で同等であった。
<まとめ>
急性増悪時に移植したILD患者は、安定期に移植したILD患者と比較して、移植後入院期間、原発性移植片機能不全や急性拒絶反応の発生率に有意差はなかった。