肺炎をきっかけに両側の肺に影が出現し重度の呼吸不全を呈することがあります。このような病態を急性呼吸窮迫症候群(ARDS; acute respiratory distress syndrome)と呼びますが、どのような臨床的な因子が予後と関連があるのか、まだあまりわかっていません。そこに言及した報告が日本から2021年に報告されました。
背景
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の致死的転帰を予測する客観的な臨床的特徴や予後因子は、ベルリン定義が発表されて以来、報告されていない。
研究の目的:肺炎による致死性ARDSの2つの表現型を区別し、臨床的に利用可能な予測因子を同定すること。
方法
前向きに収集したデータベースから、肺炎によるARDSを発症した日本人患者104例を抽出した。
死亡例を早期(診断後7日未満)死亡群と後期(7日以上)死亡群に分け、臨床変数と予後因子を統計学的に評価した。
結果
肺炎によるARDSを起こした104例のうち、50例(48%)が180日以内に死亡した。
早期死亡群は18例(36%)で死亡までの期間中央値は2日(IQR=1-5日)、後期死亡群は32例(64%)で死亡までの期間中央値は16日(IQR=13-29日)であった。
多変量回帰分析によると、早期死亡はAPACHEⅡスコア(HR 1.25,95%CI 1.12-1.39,p<0.001) とDICスコア(HR 1.54,95%CI 1.15-2.04,p=0.003) が独立した予後因子とされた。
晩期死亡は、早期の線維化を示すHRCTスコア(HR 1.28,95%CI 1.13-1.42,p<0.001) とDICスコア(HR 1.24,95%CI 1.01-1.52,p=0.039 )と関連していた。
<まとめ>
肺炎によるARDSでは、約半数が180日以内に死亡し、早期死亡はAPACHEⅡスコアとDICスコア、晩期死亡は線維化スコアとDICスコアが予後と関連があることが分かった。
ここで使用したARDSの説明、APACHEⅡスコア、DICスコア、HRCTスコアに関しては別記事で後述します。