高流量鼻カヌラ酸素療法とは、一般的に「ネーザルハイフロー」と呼ばれることが多い酸素療法です。英語ではHFNC(high-flow nasal cannula)やHFNCOT(high-flow nasal cannula oxygen therapy)と記載され、コロナ禍でさらに広く用いられるようになりました。
高流量鼻カヌラ酸素療法(ネーザルハイフロー)は、総流量30-60L/minの酸素と空気が混じったガスを、湿度100%まで加湿します。それを通常の鼻カヌラよりも大きな口径の鼻カヌラを使用して、鼻から送り込む酸素療法です。
では、なぜ「高流量」と呼ばれるのでしょうか。
成人は、一回の呼吸で行う換気量はおよそ体重(kg)×10(ml)といわれています。体重が50kgだと、一回の換気量はおよそ500mlです。
この換気量をすべてネーザルハイフローからのガスで置き換えることができる流量を高流量と呼んでいます。
例えば、鼻カヌラ1Lというのは、1分間に1L=1000mlの濃度100%の酸素を使用している状態です。1分間に1000mlということは、1秒間では1000÷60=16.7mlの100%酸素が流れます。
通常は1分間の呼吸数はおよそ15回程度なので、一回の呼吸にかける時間は4秒程度です。さらに息を吸う時間は約1秒、息を吐く時間は吸う時間の2倍の2秒、息を吐いてから次に数までが約1秒といわれています。
→実際にやってみてください。おおよそそのぐらいであることがわかります。
つまり、鼻カヌラ1Lでは、一回の換気量である500mlのうち、息を吸う時間である1秒間に16.7ml分しか補えません。
それではこの一回の換気量である500mlのすべてを鼻カヌラからのガスで補うためにはどの程度の流量が必要なのでしょうか。具体的に見てみますと、
総流量 1L/minの場合 →1秒間に 1000ml÷60秒=16.7ml
総流量 2L/minの場合 →1秒間に 2000ml÷60秒=33.3ml
総流量10L/minの場合 →1秒間に10000ml÷60秒=167ml
総流量30L/minの場合 →1秒間に30000ml÷60秒=500ml ≒一回換気量と同程度
と考えれています。
つまりおおよそ30L/min以上の流速があれば、一回換気量以上のガスを鼻カヌラから直接投与できる計算です。
もちろん体重や呼吸の状態にもよりますが、高流量システムとは、一般的に総流量30L/min以上の流速でガスを投与できる機器を指します。
<まとめ>
ネーザルハイフローとは、高流量で加湿した酸素を投与できる酸素療法であり、基本的には30L/min以上の流量で用いることが多い。