酸素の吸入を行う際、実際に体内に入る酸素濃度がどの程度か計算できます。
多くの方は、鼻カヌラ1Lだと24%、2Lだと28%と、「1L上げるごとに4%ずつ増える」と覚えているのではないでしょうか。
それはとても重要です。しかしこれを覚えているだけでは、「なぜ鼻カヌラで5L、6Lと流量を上げていくことが効率が悪いのか?」、「頻呼吸だった場合に本当にその濃度が正しいのか?」などの質問に答えることはできません。
ここでは酸素濃度の簡単な考え方を提示させていただきますので、ぜひゆっくりお読みください。
ステップ①:呼吸の時間
まず大切なのは、呼吸の時間です。
前回の「ネーザルハイフローの流量が30L/min以上なのはなぜか?」という記事でも述べさせていただきましたが、通常は1分間の呼吸数はおよそ12~16回程度といわれています。
例えば、呼吸数が15回だとすると、一回の呼吸にかける時間は4秒程度です。ここでは簡単に、
- 息を吸う(吸気)時間は約1秒
- 息を吐く(呼気)時間は吸う時間の2倍の2秒
- 息を吐いてから次に数までが約1秒
と考えてみます。
ステップ②:鼻カヌラ1Lの酸素量
ここで次のポイントです。
病院で流れてくる酸素、この酸素の濃度は何%でしょうか。もちろん100%です。大気中の酸素濃度が約21%といわれていますので、その約5倍の濃度の純酸素が流れています。
鼻カヌラ1Lというのは、1分間に1L=1000mlの濃度100%の酸素を使用している状態です。1分間に1000mlということは、1秒間では1000÷60=16.7mlの100%酸素が流れます。
つまり鼻カヌラ1Lの酸素量は1秒間に16.7mlです。
ステップ③:換気量
一回の呼吸で行う換気量はおよそ体重(kg)×10(ml)といわれています。例えば体重80kgだと、一回の換気量はおよそ800mlです。
この3つのステップで準備が整いました。ここまでのポイントをまとめます。
- 呼吸は吸気1秒、呼気2秒、呼気が終わって吸気までの時間が1秒
- 鼻カヌラ1Lの1秒間の酸素量は16.7ml
- 一回の換気量は体重×10ml(体重80kgだと800ml)
それではいよいよ計算です。
呼吸している様子を考えてみてください。呼吸をする際には、
①息を吸っている間の空気と
②呼気が終わって吸気までの間に鼻にたまった空気
を肺に取込みます。
①の息を吸っている間の空気には、吸気時間の1秒間に鼻カヌラから流れてくる100%酸素が16.7ml含まれます。
②の呼気が終わって吸気までの間(1秒)では、鼻カヌラから流れてきた100%酸素が鼻の中(鼻腔内)に16.7mlたまります。
これら以外はすべて大気中の空気(=酸素濃度21%)を吸い込みます。つまり、一回換気量は800mlだったので、残りの800-16.7-16.7=766.6mlが酸素濃度21%の空気です。
ここがとても大事です。イメージとしては以下の図のようになります。
これらを合計すると、鼻カヌラ1Lを使用した場合に一回の呼吸で体内に入る酸素量は、
100%×16.7ml+100%×16.7ml+21%×766.6ml=194.4ml
となります。
これを全体の一回換気量である800mlで割ると、194.4ml÷800ml=約24%です。
最後が少し難しかったですが、おおよそこのような計算で求めることが可能です。
計算式にすると以下の通りです。
酸素濃度(%)=(16.7×(鼻カヌラの流量)×2+(体重×10-16.7×(鼻カヌラの流量)×2)×0.21)÷(体重×10)×100
では、もし鼻カヌラ2Lだったらどうなりますか?
鼻カヌラ2Lというのは、1分間に2L=2000mlの濃度100%の酸素を使用している状態です。1分間に2000mlということは、1秒間では2000÷60=33.3mlの100%酸素が流れます。
呼気から吸気の間に鼻腔にも33.3mlの濃度100%の酸素がたまるので。。。
上の考え方で計算すると、およそ28%ぐらいの酸素濃度になることがわかります。
いかがでしょうか。体重や呼吸の状態で多少のずれはありますが、この考え方は非常に重要ですので、ぜひマスターしてください。
これがマスターできれば、はじめの質問である「なぜ鼻カヌラで5L、6Lと流量を上げていくことが効率が悪いのか?」、「頻呼吸だった場合に本当にその濃度が正しいのか?」がわかるようになります。
(最終アップデート:2022年2月18日)