気胸、間質性肺炎の合併症

間質性肺炎の合併症には、肺が破れて空気が漏れてしまう気胸という合併症があります。以下に気胸に関する一般的な知見をまとめています。

目次

気胸

気胸とはどのような合併症か

気胸とは肺が破れて空気が胸の中(胸腔)に漏れてしまう病気です。

肺は多くの空気を取り込むことができる臓器であり、車のタイヤのように膨らんでいます。

車のタイヤであれば、破けてパンクしても、タイヤはしぼみますが、空気は大気中にもれていきますが、肺が破れてしまうと、肺がしぼみ漏れた空気が胸の中(胸腔内)にたまってしまいます。

気胸のイメージ図

胸腔は肋骨で囲まれており、一定の容積以上には膨らみませんので、漏れた空気がさらに肺を圧迫して、進行すると血圧低下に至ります(この状態を緊張性気胸といいます)。

このような状態になると、胸痛や息苦しさを自覚し、急激に酸素濃度が低下してしまいます。肺が破れて起こる病気ですので、突然発症するのが特徴です。

気胸は肺に圧力がかかると起こりやすいといわれています。

例えば、咳をしたり、重いものを持ったり、排便時にいきんだりすることで、突然の胸痛を自覚し、そのあとに続く息苦しさが典型的な症状です。

気胸の原因には、外傷や慢性閉塞性肺疾患(COPD)、月経に伴うものなど様々なものがありますが、間質性肺炎は原因の一つとしてとても重要です。

気胸になった場合には、特に背景に間質性肺炎があると、自然にはなかなか治りにくいことを経験します。治療を行っても数週間から数カ月単位でとても長い時間かかることも多く、気胸が原因となって感染や急性増悪を発症することもあります。

そのため、このような症状を自覚された場合には、なるべく早く受診されることをお勧めします。

気胸の治療で重要な4つの方法

気胸の治療には大きく以下の4つの方法があります。

  1. 安静
  2. 手術
  3. 胸腔ドレナージ
  4. 気管支充填術

①安静

まず、最も重要なのが安静です。

気胸は肺が破れてしまう病気です。そして咳などで肺に圧力がかかると起こりやすいことがわかっています。そのため、まず何よりも肺になるべく負担をかけないことが重要です。

なるべく安静にし、重いものを持たないように注意してください。また、咳がある場合には咳止めの薬(鎮咳薬)を使用したり、便秘気味であれば排便時にいきまないように下剤をすすめたりしています。

②手術

破れてしまった肺を部分的に切除するのも有効な治療法です。

一般的に自然気胸と呼ばれる原因が不明な気胸の場合には、時に手術が有効な治療法の一つとなります。

特に若年で発症する気胸はこの自然気胸が多く、①安静や③胸腔ドレナージでも再発を繰り返す場合には、手術で肺を切除する方法をすすめることもあります。
(正確には自然気胸のなかの原発性気胸という分類ですが、一般的には自然気胸として説明されることが多いと思います。)

背景に間質性肺炎がある場合には、手術自体がそもそも困難であったり、手術をしたのちも再発を繰り返すことがあります。しかし、これから説明する③胸腔ドレナージを行っても気胸が良くならず難治性となることもあり、手術が唯一の治療手段であることも多く、その適応は呼吸器外科や麻酔科の医師とも相談して決定しています。

③胸腔ドレナージ

改めて肺のイメージ図を考えてみます。気胸は肺が破れて、肺がしぼみ、漏れた空気が胸の中(胸腔内)にたまってしまう病気でした。

胸腔ドレナージとは、この漏れた空気を直接吸い出してしまう治療法です。

具体的には、胸からドレナージチューブを留置してたまった空気の外に出してあげます。胸腔内にたまった空気を外に逃がすことによって、肺が膨らみ、息苦しさや酸素の状態が改善します。

しかし、破れた肺の穴は自然にふさがるのを待つしかないので、なかなか穴がふさがらず、時間がかかることも多いです。

④気管支充填術

③胸腔ドレナージは胸腔に逃げた空気を外に出す治療でした。②手術は破れた肺を切除する方法です。この④気管支充填術は、破れた肺の根元の気管支を充填材で閉塞させて、空気が漏れることをふせぐ治療です。

気管支鏡で行う処置の一つであり、空気の漏れる量を見ながら、一つ一つ穴を充填材でふさいでいきます。
もし根元を完全にふさぐことができれば、その先の肺が破れていても、そこに空気が到達せず、胸腔内に空気が漏れることはありません。しかし、なかなか完全にふさぐことは難しく、気管支充填術を行っても空気漏れが続くことも多いです。

これら4つの治療が気胸でとても重要な治療法です。

気胸は肺が破れて、漏れた空気が胸腔内にたまってしまう病気でした。

破れた肺を治療するには、①安静で自然にふさがるのを待つ、②手術で破れた肺を切除する、漏れた空気を③胸腔ドレナージで直接外に出してしまう、穴がふさがりにくいなら④気管支充填術で漏れないように根元からふさいでしまう、方法があります。気胸の治療は、これら4つを組み合わせて行います。

気胸で行う胸膜癒着術、注意点とつり上げ法について

気胸の治療の一つに胸腔ドレナージがあります。
胸腔ドレナージとは、胸腔内にドレナージチューブを留置して、漏れた空気を外に出して、肺がしぼむ(虚脱する)のを防ぐ治療でした。

この胸腔ドレナージの際に、行う処置として、胸膜癒着術があります。

胸腔内に留置したドレナージチューブを用いて、胸腔内に癒着剤(液体)を投与し、肺を胸壁とをくっつけてしまうことで、気胸の再発や気胸がおこった際に肺が虚脱することを防ぐ効果を期待します。

胸腔内に癒着剤を入れたあと、一定期間は胸腔内に薬をとどめておく必要があります。しかし、胸腔内には空気を逃がすためのドレナージチューブを留置しており、チューブが下を向いたままでは、空気と一緒にせっかく投与した癒着剤も出て行ってしまいます。

そこで行うのがつり上げ法です。

ドレナージチューブを上に向けることで、空気は逃げていきますが、液体である癒着剤は上に向いたチューブ内を移動することができず、胸腔内に留まって効果を発揮します。

このような方法で気胸の時には胸膜癒着術を行います。

胸水が貯留した時のように、もしドレナージチューブをクランプして(閉じて)しまうと、液体である癒着剤は胸腔内に留まりますが、漏れた空気が外に逃げていかず、気胸が悪化してしまうため、気胸の際には行いません。この点は特に注意が必要です。

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