IPAFとは?膠原病的な特徴を有する間質性肺炎

間質性肺炎の精査を行う際に、例えば抗CCP抗体だけが陽性の方がいます。抗CCP抗体は関節リウマチの方で陽性になる血液検査の項目ですが、関節の炎症や骨破壊などがなく、関節リウマチの分類基準は満たさない。

このように、膠原病の分類基準は満たさないが、膠原病の匂いのする間質性肺炎を現在ではIPAF(アイパフ、interstitial pneumonia with autoimmune features)として考える概念が2015年に報告されました。

Fischer A, et al. An official European Respiratory Society/American Thoracic Society research statement: interstitial pneumonia with autoimmune features. Eur Respir J 2015;46:976–87.

このIPAFという概念がうまれ、様々な研究が進んでいます。しかし、このIPAFの概念はあくまで研究のための分類基準であり、診断ではない点はとても重要で覚えておいてほしい内容です。

IPAFと分類するためには、臨床的ドメイン、血清学的ドメイン、形態学的ドメインの3つのドメインのうち、少なくとも2つ以上のドメインを満たす必要があります。以下にそれぞれのドメインに含まれる項目を提示します(実際に用いる際には元論文を参考にしてください)。

A. 臨床的ドメイン

  1. 機械工の手(mechanic hands)
  2. 指先潰瘍
  3. 関節炎、または、多関節の朝のこわばり(60分以上)
  4. 手掌の毛細血管拡張症
  5. レイノー現象
  6. 原因不明の手指の浮腫
  7. ゴットロン徴候

B. 血清学的ドメイン

  1. 抗核抗体320倍以上 diffuse, speckled, homogeneousパターン
    またはNucleolarパターン(力価を問わない)
    またはCentromereパターン (力価を問わない)
  2. リウマトイド因子が正常上限の2倍以上
  3. 抗CCP抗体
  4. 抗ds-DNA抗体
  5. 抗SS-A / Ro抗体
  6. 抗SS-B / La抗体
  7. 抗RNP抗体
  8. 抗Sm抗体
  9. 抗トポイソメラーゼ (Scl-70)抗体
  10. 抗ARS抗体 (例えばJo-1, PL-7, PL-12, EJ, OJ, KS, Zo, tRS)
  11. 抗PM-Scl抗体 
  12. 抗MDA5抗体

C. 形態学的ドメイン

  1. HRCTによる画像パターン
    NSIP、OP、NSIP with OP overlap、LIP
  2. 外科的肺生検による病理パターン
    NSIP、OP、NSIP with OP overlap、LIP
    胚中心を伴う間質のリンパ球集簇
    びまん性のリンパ球・形質細胞浸潤(リンパ濾胞の有無は問わない)
  3. マルチコンパートメントの関与(間質性肺炎の所見に加えて)
    原因不明の胸水または胸膜肥厚
    原因不明の心嚢水または心膜肥厚
    原因不明の気道病変(呼吸機能検査、画像、病理検査で評価)
    原因不明の肺血管障害
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