ILAの中で間質性肺疾患が疑われる方の有病率と危険因子(2023年)

検診などでたまたま偶然発見された肺の間質の異常陰影をILA(interstitial lung abnormality)と呼んでいますが、2020年にILAのposition paperが発表されました。

今回は、ILAの重要なコホートであるCOPDGeneから、ILAを認める方のうち、間質性肺疾患が疑われる画像所見をもつ方のリスクに関する研究結果が報告されました。
Rose JA, Menon AA, Hino T, Hata A, Nishino M, Lynch DA, Rosas IO, El-Chemaly S, Raby BA, Ash SY, Choi B, Washko GR, Silverman EK, Cho MH, Hatabu H, Putman RK, Hunninghake GM. Suspected Interstitial Lung Disease in COPDGene Study. Am J Respir Crit Care Med 2023;207:60–68.

間質性肺疾患を疑う画像をもつ方は、COPD GeneのILAの半数に認め、運動量の減少、症状の悪化、酸素使用量の増加、重症の呼吸状態悪化、死亡率の上昇と関連していました。

さらに詳しく解説(専門的な内容です)

背景

間質性肺異常症(ILA)は、CT撮像で偶然に検出される画像所見で、肺機能の異常や死亡率の上昇と関連しているが、間質性肺疾患(ILD)を偶然に持つ方がこれらと同様の結果となるかは不明である。

目的:ILDが疑われる画像を認める方の有病率と危険因子を明らかにし、転帰を評価すること。

方法

COPDGene(Chronic Obstructive Pulmonary Disease Genetic Epidemiology)研究において、ILDの疑いがある方を評価対象とした。
多変量線形回帰モデル、縦断回帰モデル、Cox比例ハザード回帰モデルを用いて、St. George’s Respiratory Questionnaire、6分間歩行試験、補助酸素使用、呼吸器増悪、および死亡率との関連を評価した。

ILD疑い(Suspected ILD)の定義:
ILAおよび少なくとも1つの追加基準(CTでdense fibrosis、予測FVC<80%、予測DLCO<70%)を満たす

測定方法と主な結果

データが得られた4,361人のうち、239人(5%)はILDが疑われ、204人(5%)はILDが疑われないILAであった。

多変量解析では、ILDの疑いは、ILD の疑いがないILAと比較して、以下の項目と関連を認めた。
St. George’s Respiratory Questionnaireスコアの上昇(平均差[MD]3.9点;95%信頼区間[CI]、0.6~7.1;P = 0.02)
6分間歩行テストで歩行距離の低下(MD -35 m;95%CI、-56 m~-13 m;P=0.002)
補助酸素使用量の増加(オッズ比[OR]、2.3;95%CI、1.1~5.1;P = 0.03)
重度の呼吸増悪(OR、2.9;95%CI、1.1~7.5;P = 0.03)
死亡率の増加(ハザード比、2.4;95%CI、1.2~4.6;P = 0.01 )

ILDが疑われるリスク因子には、自称黒人人種(OR、2.0;95%CI、1.1-3.3;P = 0.01)および喫煙歴(OR、1.2;95%CI、1.1-1.3;P = 0.0005)を認めた。

結論

ILD疑いは、COPD GeneのILAの半数に認められ、運動量の減少、症状の悪化、酸素使用量の増加、重症の呼吸状態悪化、死亡率の上昇と関連している。

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