胸部X線写真から間質性肺炎を検出する深層学習アルゴリズム(2022年)

肺の慢性的な線維化疾患を早期に発見するための、人工知能の一種である深層学習アルゴリズムの開発と評価について述べた研究が報告されました。

Nishikiori H, Kuronuma K, Hirota K, Yama N, Suzuki T, Onodera M, Onodera K, Ikeda K, Mori Y, Asai Y, et al. Deep learning algorithm to detect fibrosing interstitial lung disease on chest radiographs. Eur Respir J (2022) doi: 10.1183/13993003.02269-2021

胸部X線写真画像を用いて慢性線維性間質性肺疾患を検出するためのディープラーニングアルゴリズムが開発されました。
本アルゴリズムの検出能力は、医師の検出能力に劣らないものであり、今後の実用化が望まれます。

さらに詳しく解説(専門的な内容です)

背景
特発性肺線維症などの慢性線維性間質性肺疾患(CF-ILDs)の治療には、抗線維化薬が有効である。呼吸機能の悪化を遅らせ、急性増悪を予防するために、これらの治療法を早期に使用することが推奨されている。しかし、胸部X線写真を用いてCF-ILDの初期段階にある患者を識別することは困難である。
本研究では、胸部X線写真画像を用いてCF-ILDを検出するためのディープラーニングアルゴリズムを開発し、検証しました。

方法
札幌医科大学附属病院の画像アーカイブから、CF-ILD患者263名から653枚、CF-ILDでない患者506名から506枚の胸部X線写真を特定し、921枚を深層学習に、238枚をアルゴリズムテストに使用しました。
アルゴリズムは,CF-ILD の確率を表す 0 から 1 までの数値スコアを出力するよう設計した。
テスト用データセットを用いて、CF-ILDを特定するアルゴリズムの能力を医師と比較した。
コンピュータ断層撮影画像でCF-ILDを確認した第二のデータセットを用いて、本アルゴリズムの性能をさらに評価した。

結果
本アルゴリズムの検出能力を示すAUCは0.979であった。
スコアのカットオフ値を0.267とすると、検出の感度と特異度はそれぞれ0.896と1.000であった。これらのデータから、アルゴリズムの性能は、呼吸器科医や放射線科医を含む医師の性能に劣らないことが示され、性能は2番目のデータセットで検証された。

図の解説:胸部X線写真を解釈した13名の医師において、感度と特異度の中央値(範囲)はそれぞれ0.837(0.467-0.904)および0.990(0.864-1.000)であった。放射線科医では感度および特異度の中央値(範囲)はそれぞれ0.681(0.496-0.889)および0.990(0.990-1.000)、呼吸器科医では0.859(0.467- 0.904) および0.966(0.864-1.000)であった。これらの結果を上図にプロットしている。
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