間質性肺炎と家族歴

間質性肺炎において、「間質性肺炎の家族歴がある」というのは非常に重要な情報です。家族歴がある間質性肺炎の場合、画像的な特徴があったり、予後が不良であったり、一つの重要な要素と考えられています。

このページでは間質性肺炎の家族歴に関して、既報をまとめています。

目次

生存率の低下と関連がある

Cutting CC, Bowman WS, Dao N, Pugashetti JV, Garcia CK, Oldham JM, et al. Family History of Pulmonary Fibrosis Predicts Worse Survival in Patients With Interstitial Lung Disease. Chest 2021;159:1913–21.

間質性肺炎における家族歴の有無は、非常に重要な情報です。家族歴の有無における予後を評価した研究が報告されました

背景
■家族性肺線維症に関連する遺伝的マーカーは間質性肺疾患(ILD)患者の生存率に差をつけることが示されている
■ILDのための遺伝子検査は一般的に行われていないが、家族歴はよく取得され、結果のリスクを知るための情報提供が可能である

研究問題
■自己申告による家族性肺線維症の有無は患者の生存に差をつけるか?

方法
■ テキサス大学サウスウェスタン医療センターおよびカリフォルニア大学デービス校で臨床登録に同意した連続したILD患者から家族歴を系統的に取得
■患者は特発性肺線維症(IPF)と非IPF ILD診断で分類され、家族性肺線維症の有無でサブ分類された
■移植なしでの生存は、多レベル混合効果Cox比例ハザード回帰を用いて比較された。

結果
■1,262人の患者のうち、534人(42%)がIPF ILDであり、728人(58%)が非IPF ILD
■非IPF ILDの患者のうち、18.5%が膠原病、15.6%が慢性過敏性肺炎、23.5%が分類不能のILDであった
家族性肺線維症は、IPF ILD患者134人(25.1%)、非IPF ILD患者90人(12.4%)
■家族性IPFを持つ者は、家族歴のないIPFに比べて死亡または移植のリスクが80%増加した(ハザード比[HR], 1.8; 95% CI, 1.37-2.37; P < .001)、一方、家族性非IPF ILDを持つ者は、家族歴のない非IPF ILDに比べて2倍のリスク増加を示した(HR, 2.08; 95% CI, 1.46-2.96; P < .001)

解釈
■家族性の肺線維症は、移植なし生存率が低いことを予測する
■家族性非IPFは家族歴のないIPFに近似するため、そのような患者に対しては早期介入を考慮すべきである
■臨床的遺伝子検査が広く利用可能になり、実用的な結果を提供するまで、家族歴は聴取すべきであり、リスク分類において考慮されるべきである

一親等内の間質性肺炎の発症リスク

Steele MP, Peljto AL, Mathai SK, Humphries S, Bang TJ, Oh A, et al. Incidence and Progression of Fibrotic Lung Disease in an At-Risk Cohort. Am J Respir Crit Care Med 2022.

今回、家族歴のある間質性肺炎の一親等近親者についてスクリーニングを行った結果と間質性肺炎の発症リスクが解析されました。
家族歴を有する間質性肺炎患者さんは、その一親等近親者も間質性肺炎を発症する危険性が高いかもしれません。

背景
家族性間質性肺炎患者の親族は、肺線維症のリスクが高く、前臨床肺線維症(PrePF)を発症する。

目的
家族性間質性肺炎患者の一親等内の新規発症PrePFの発生率と進行度、および生存率との関係を明らかにする

方法
■家族性間質性肺炎の家族を対象に、健康質問票と胸部HRCTスキャンで初期スクリーニングを行い、約4年後に評価を繰り返したコホート研究
■家族性間質性肺炎患者の無症状一親等近親者493名がベースライン時に評価され、当初の対象者のうち296名(60%)がその後の評価に参加した

結果
■HRCTの間隔中央値は3.9年(IQ範囲3.5-4.4)であった
■再評価に同意した252人の被験者は、ベースライン時にはPrePFではないと判定されたが、16人(6.3%)はPrePFを発症
■PrePFの年間発生率を控えめに見積もると10万人年当たり1,023人(95%CI 511-1831)
■ベースラインでPrePFを発症した44人のうち、38.4%の被験者が呼吸困難の悪化を認めたのに対し、PrePFを発症していない被験者では15.4%だった(P=0.002)
■HRCTによる通常の間質性肺炎(UIP)(P<0.0002)およびベースラインの定量的線維化スコア(P<0.001)も、呼吸困難の悪化と関連していた
■初回スクリーニング時のPrePFは、生存率の低下と関連していた(P<0.001)

まとめ
■一親等近親者集団におけるPrePFの発生率は、散発性のIPFで報告されている発生率の少なくとも100倍であった
■PrePFとIPFは異なる疾患であるが、PrePFがIPFと同様に進行性であり、生存率の低下と関連することを実証した

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