潰瘍性大腸炎は消化器内科で出会う疾患ですが、時に肺病変を合併することがあります。今回日本の施設から潰瘍性大腸炎に関連する肺病変をまとめた大変すばらしい研究が報告されました。
一言解説
潰瘍性大腸炎の約5%に肺病変を発症する。多くは治療反応性はよいが、一部に線維化を伴う間質性肺炎を合併し予後不良な経過をたどる可能性がある。
さらに詳しく解説(専門的な内容です)
背景
潰瘍性大腸炎(UC)は、肺を含む様々な腸管外臓器を巻き込む慢性消化器炎症性疾患である。UC関連肺疾患(UC-LD)は広く認識されているが、不明な点も多い。
研究課題:UC-LDの発症率、特徴、臨床経過、危険因子は何か?
研究デザインと方法
本研究では、連続したUC患者の診療記録をレビューすることにより、UC-LDをレトロスペクティブに同定し、分類した。それぞれのUC-LDの発生率、特徴、臨床経過を調べ、それぞれのUC-LDを持つ患者と持たない患者の臨床的特徴を比較した。
結果
UC患者563名中、28名(5.0%)が平均77ヶ月の追跡期間中にUC-LDを発症した。
その多くは気道疾患(AD)(n = 13 [2.3%])または組織化肺炎(OP)(n = 10 [1.8%])を示し、OP以外は間質性肺炎(IP)6例(0.8%)、胸膜炎1例(0.2%)であった。
AD患者13名全員は吸入または全身性コルチコステロイドに良好な反応を示したが、5名は頻繁に増悪を経験した。AD発症の危険因子として、高齢と大腸切除の既往が同定された。
OPの10例のうち9例は薬物による発症の可能性があった。OPは1例のみ再発を認め、全例が疑われる薬剤の中止および/または副腎皮質ステロイドの投与により良好な臨床経過を呈した。
IPの臨床経過は線維化の有無に依存し、線維化を伴うIPは徐々に悪化することが示された。また、高齢者はIPの発症と関連していた。
<まとめ>
UC患者のうち、5%が肺病変を発症した。AD、OP、線維化を伴わないIPは、それぞれのUC-LDのタイプに応じたステロイド治療により良好な予後を示すが、線維化を伴うIPは徐々に悪化し、予後不良であることが示された。