間質性肺炎の患者では多くの併存症を有し、薬剤の数も多くなりがちです。IPF患者では併用薬の負担が抗線維化薬の忍容性不良と関連していました。さらにILD患者では、薬の処方の複雑さが予後を予測するうえで有用であることも明らかとなりました。
一言解説
特発性肺線維症では、薬が多いと抗線維化薬の忍容性が悪いことが明らかとなった。また間質性肺炎全体でも、処方内容が複雑であることは、予後不良な因子である可能性がある。
さらに詳しく解説(専門的な内容です)
背景
間質性肺疾患(ILD)患者では、多くの疾患が合併し、併用薬の負担が大きく、ILD治療薬の忍容性や健康アウトカムに影響を与える可能性がある。
研究目的:特発性肺線維症(IPF)および非IPFのILD患者において、併用薬の負担とILD治療薬の忍容性、生存率との関連を明らかにすること。
方法
ニンテダニブまたはピルフェニドンの投与を受けたIPF患者と、アザチオプリンまたはミコフェノール酸モフェチルの投与を受けた非IPFのILD患者を、オーストラリアとカナダの2つのコホートから同定した。
ベースラインの併用薬の負担は、薬物数、ポリファーマシー(5種類の薬物)、MRCI(Medication Regimen Complex Index)の3つの指標で評価された。
薬物不耐性および投薬中止は、ILD治療薬投与開始後6カ月および1年目にそれぞれ評価した。
Cox回帰モデルおよび尤度比検定を用いて、無肺移植生存率に対する投薬負担の予後的意義を明らかにした。
結果
治療を受けたIPF患者645人において、43%が抗線維化薬の不耐性(定義:減量、一時的な投与中断、または永久的な薬剤中止)につながる副作用を開始後6カ月以内に経験し、ベースラインの併用薬負担が不耐性と関連していた(投薬数:P = 0.005、ポリファーマシー:P = 0.006、MRCI:P = 0.004 )。
- この関連性は、免疫抑制剤の治療を受けた1225名の非IPFのILD患者では観察されず、不耐性も低い結果であった(18%)。
- ベースラインの併用薬負担は、1年後の抗線維化薬(29%)および免疫抑制薬(20%)の中止と関連していなかった。
MRCIは、両コホートにおいて無肺移植生存率と関連する唯一の併用薬物負担の指標であり(両者ともP<0.01)、一般的な臨床因子やILD-GAP(両者ともP<0.001)よりも予後予測を改善するものであった。
<まとめ>
IPF患者において、併用薬の負担は抗線維化薬の不耐性と関連している。薬物療法の複雑さ(MRCI)は、より単純な併用薬物負荷の評価よりもILDの予後を予測する上で優れている。