進行性線維化を有する間質性肺炎の有病率には様々な報告がありますが、米国から保険データベースを用いた有病率が報告されました。
一言解説
間質性肺炎のなかで進行性に線維化が悪化する一群が存在するが、米国から保険データベースを用いた有病率が報告された。
さらに詳しく解説(専門的な内容です)
理由
進行性線維化性間質性肺疾患(ILD)は、進行性の肺線維化を特徴とするILDの広いグループを記述する臨床概念である。特発性肺線維症(IPF)以外の進行性線維化性ILDの有病率はよく分かっていない。
研究目的:米国の保険請求データベースにおいて、IPF以外の線維性ILD患者における疾患進行の有病率を新しいアルゴリズムを用いて推定すること。
方法
2015年10月から2019年9月までの行政請求データを用いて、商業保険またはMAPDに加入している成人を含む後方視的研究である。
進行性の表現型を持つIPF以外の線維性ILDの可能性が高い患者を、ILD関連の診断コード(IPFを除く)と、肺機能検査、胸部画像、経口コルチコステロイド(OCS)薬、免疫抑制薬、肺移植、酸素療法、緩和ケア、呼吸器入院などの線維性ILD進行の請求ベースのプロキシーを組み込んだアルゴリズムにより同定した。
進行性の疾患挙動を伴うIPF以外の線維性ILDの有病率は、進行のプロキシに潜在する不正確さを考慮し、厳格な症例定義と緩やかな症例定義を使用して算出した。
結果
約900万人の研究対象患者のうち、17,136人IPF以外の線維性ILDと同定された。
1万人当たりの疾患進行の有病率(95%信頼区間)は、MAPD加入者(n = 14,686)では平均観察期間1.44年で12.14(11.74-12.54)から29.05(28.43-29.67)、商業加入者(n = 2,450)では平均観察期間1.29年で0.89(0.81-0.97)から2.36(2.24-2.48)であった。
有病率の推定値は、どちらの保険タイプでも年齢とともに増加した。
進行した患者のうち、4,097人がOCSを考慮しない進行のプロキシを2つ以上満たし(厳密な症例定義)、9,946人が進行のプロキシを1つ以上満たした(緩やかな症例定義)。
プロキシの平均(標準偏差)数は2.1(1.3)で、最も多く満たされた個々のプロキシ(単独または他のプロキシとの組み合わせ)は、OCS使用(48.9%)、呼吸器入院(44.2%)および酸素療法(44.1%)であった。
<まとめ>
進行性の表現型を持つIPF以外の慢性線維性ILDの有病率に関する、保険請求に基づく初めての推定値が米国から報告された。