強皮症に伴う肺高血圧症、間質性肺炎との関連(スペイン2022年)

全身性強皮症の重要な合併症に肺高血圧症がありますが、その臨床的背景や間質性肺疾患との関連はあまりまだわかっていませんが、今回スペインのコホート研究を用いた研究結果が報告されました。

Guillén-Del-Castillo A, Meseguer ML, Fonollosa-Pla V, Giménez BS, Colunga-Argüelles D, Revilla-López E, et al. Impact of interstitial lung disease on the survival of systemic sclerosis with pulmonary arterial hypertension. Sci Rep 2022;12:5289.

 

一言解説

肺高血圧症を合併した強皮症は、症状が強く、低肺機能であり、間質性肺疾患の合併は約40%に認めた。5年生存率は約40%であり、間質性肺疾患の合併の有無で予後に差は認めなかった。

 

 

 

さらに詳しく解説(専門的な内容です)

背景と目的

肺動脈性肺高血圧症(PAH)を伴う、または伴わない全身性強皮症(SSc)患者(PAH-SSc/non-PAH-SSc)の重症度マーカーと転帰、および間質性肺疾患(ILD)がPAH-SSc に与える影響を評価する。

 

方法

スペインSScレジストリの非PAH-SSc患者とスペインPAHレジストリのPAH-SSc患者を対象とした。

 

結果

合計364人のPAH-SSc患者と1589人のnon-PAH-SSc患者が含まれた。

PAH-SSc患者はnon-PH-SSc患者と比較して

  • NYHA機能分類(NYHA-FC)が悪く
  • 努力肺活量(FVC)低値(81.2 ± 20.6% vs 93.6 ± 20.6%, P<0.001)
  • 三尖弁輪面収縮期伸展低値(17.4 ± 5.2mm vs 19.9 ± 6.7mm、P<0.001)
  • 心嚢液貯留の割合高値(30% 対 5.2%、P < 0.001)

であったが、ILDの有病率は同程度(41.8% vs 44.9%)であった。

 

PAH-SSc患者では、ILDは血行動態および低肺機能と関連していた。

5年の無肺移植生存は、PAH-SSc 患者で41.1%,non-PAH-SSc患者で 93.9%であった(P<0.001)。さらに、PAH-SSc患者の生存率は、その重症度にかかわらず、ILD の影響を受けなかった。

(図. 生存曲線。文献より引用掲載)

 

PAH-SSc患者を対象とした多変量生存解析では、診断時年齢、NYHA-FC、PVRの増加、DLCOの減少、肺高血圧薬の併用療法なしが主要な危険因子として確認された。

 

 

<まとめ>

PAH-SScでは、死亡リスクは臨床的要因、肺機能、血行動態の要因によって大きく上昇した。ILDの合併はPAH-SScの血行動態と低肺機能と関連があったが、生存率は低下させなかった。

 

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