肺がんの発症と膠原病に伴う間質性肺疾患

 

間質性肺炎の重要な合併症の一つに肺がんがありますが、実は膠原病に伴う間質性肺疾患における肺がんの合併に関してはあまり知られていません。

今回、日本から膠原病に伴う間質性肺疾患と肺がんの合併に関してまとめた研究が報告されました。

Watanabe S, Saeki K, Waseda Y, Murata A, Takato H, Ichikawa Y, et al. Lung cancer in connective tissue disease-associated interstitial lung disease: clinical features and impact on outcomes. J Thorac Dis 2018;10:799–807.

 

一言解説

膠原病に伴う間質性肺疾患でも肺がんの発症には注意が必要であり、特に肺気腫や免疫抑制剤の治療していないことが肺がん発症のリスク因子であった。

 

 

 

さらに詳しく解説(専門的な内容です)

背景

肺がんは、特発性肺線維症の患者の生存に悪影響を及ぼす。しかし、膠原病に伴う間質性肺疾患(CTD-ILD)患者における肺がんについてはほとんど知られていない。

目的:CTD-ILDにおける肺がんの有病率と危険因子、および肺がんを有するCTD-ILD患者の臨床的特徴と生存を評価すること。

 

方法

2003年から2016年までのCTD-ILD患者を対象に、単一施設の後方視的レビューを実施した。病理学的に肺がんと診断された患者を同定し、肺がんの有病率、危険因子、臨床的特徴、およびCTD-ILD患者の転帰に及ぼす肺がんの影響を検討した。

 

結果

CTD-ILD 266例のうち、観察期間中央値64.0か月の間に24例(9.0%)が肺がんを発症した。

 

CTD-ILDに肺がんを合併した患者は、高齢、男性、喫煙者、関節リウマチ、通常型間質性肺炎(UIP)パターン、胸部CT検査での肺気腫、肺拡散能力(DLCO)低値、免疫抑制療法を受けていない患者でより多くみられた。

多変量解析により、肺気腫の存在(オッズ比(OR)8.473;95%信頼区間(CI)2.241-32.033)および免疫抑制療法の未導入(OR 8.111;95%CI 2.457-26.775)は肺がんの独立危険因子であることが示唆された。

 

肺がんを発症したCTD-ILD患者の生存率は、肺がんを発症していない患者よりも有意に悪かった(10年生存率:28.5% vs. 81.8%、P<0.001)。

 

 

<まとめ>

膠原病に伴う間質性肺疾患において、肺がんの発症率は約5年で9%であり、肺気腫や免疫抑制剤の非使用と関連し、死亡率上昇の一因である。

 

 

膠原病に伴う間質性肺疾患 診断・治療指針〈2020〉

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