間質性肺炎の精査を行う際に、例えば抗CCP抗体だけが陽性の方がいます。抗CCP抗体は関節リウマチの方で陽性になる血液検査の項目ですが、関節の炎症や骨破壊などがなく、関節リウマチの分類基準は満たさない。
このように、膠原病の分類基準は満たさないが、膠原病の匂いのする間質性肺炎を現在ではIPAF(アイパフ、interstitial pneumonia with autoimmune features)として考える概念が2015年に報告されました。
このIPAFという概念がうまれ、様々な研究が進んでいます。しかし、このIPAFの概念はあくまで研究のための分類基準であり、診断ではない点はとても重要で覚えておいてほしい内容です。
IPAFと分類するためには、臨床的ドメイン、血清学的ドメイン、形態学的ドメインの3つのドメインのうち、少なくとも2つ以上のドメインを満たす必要があります。以下にそれぞれのドメインに含まれる項目を提示します(実際に用いる際には元論文を参考にしてください)。
A. 臨床的ドメイン
- 機械工の手(mechanic hands)
- 指先潰瘍
- 関節炎、または、多関節の朝のこわばり(60分以上)
- 手掌の毛細血管拡張症
- レイノー現象
- 原因不明の手指の浮腫
- ゴットロン徴候
B. 血清学的ドメイン
- 抗核抗体320倍以上 diffuse, speckled, homogeneousパターン
またはNucleolarパターン(力価を問わない)
またはCentromereパターン (力価を問わない) - リウマトイド因子が正常上限の2倍以上
- 抗CCP抗体
- 抗ds-DNA抗体
- 抗SS-A / Ro抗体
- 抗SS-B / La抗体
- 抗RNP抗体
- 抗Sm抗体
- 抗トポイソメラーゼ (Scl-70)抗体
- 抗ARS抗体 (例えばJo-1, PL-7, PL-12, EJ, OJ, KS, Zo, tRS)
- 抗PM-Scl抗体
- 抗MDA5抗体
C. 形態学的ドメイン
- HRCTによる画像パターン
NSIP、OP、NSIP with OP overlap、LIP - 外科的肺生検による病理パターン
NSIP、OP、NSIP with OP overlap、LIP
胚中心を伴う間質のリンパ球集簇
びまん性のリンパ球・形質細胞浸潤(リンパ濾胞の有無は問わない) - マルチコンパートメントの関与(間質性肺炎の所見に加えて)
原因不明の胸水または胸膜肥厚
原因不明の心嚢水または心膜肥厚
原因不明の気道病変(呼吸機能検査、画像、病理検査で評価)
原因不明の肺血管障害