特発性肺線維症(IPF)の重要な合併症の一つに肺癌があり、早期であれば手術が選択肢となります。しかし、肺の状態が悪い場合には手術が困難であったり、手術ができても術後の急性増悪が懸念です。
日本の第Ⅱ相多施設共同研究として、周術期にピルフェニドンを使用することで、術後の急性増悪発症を抑えることができるかを検証した研究(PEOPLE試験)が報告されています。
背景
特発性肺線維症(IPF)は肺癌に合併することが多く、また肺癌手術後の急性増悪も懸念される。ピルフェニドン(商品名:ピレスパ)は、特発性肺線維症の治療薬であり、病気の進行を抑える効果が記載されています(詳しくはこちらの記事もご覧ください⇒【保存版】抗線維化薬とはどのような薬か。ピルフェニドン、ニンテダニブについてまとめます。)。
研究目的:周術期のピルフェニドン投与により、肺癌手術後の急性増悪を抑制できるかを検討する。
方法
肺癌手術の候補となったIPF患者にピルフェニドンを経口投与した。
- ピルフェニドンは最初の2週間は600mg/日、その後1200mg/日を投与した。手術は1200mg/dayを2週間以上投与した後に行われた。
主要評価項目は術後0-30日の急性増悪の非発生率(ヌル値80%と比較)。
副次評価項目は安全性。
IPFおよびIPFの急性増悪の放射線学的診断と病理学的診断は、独立した審査委員会によって確認された。
結果
2012年6月から2014年1月までに43例が登録され、39例が適格であった(full analysis set [FAS] )。ピルフェニドン治療と手術の両方が行われたのは36例であった(per protocol set [PPS])。
IPFの急性増悪は、FASでは37/39例(94.9 % [95 % confidential interval: 82.7-99.4 %, p = 0.01] )、PPSでは36/37例(97.2 % [95 % confidential interval: 85.5-99.9 %, p = 0.004] )で発生しなかった。
グレード5の有害事象(死亡)は急性増悪後の1例で発生したが、その他のグレード3~5の有害事象は認められなかった。
<まとめ>
ピルフェニドンの肺癌の周術期治療は安全であり、特発性肺線維症(IPF)における術後の急性増悪の発症抑制が期待される。