強皮症に対する新たな治療薬リツキシマブ

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全身性強皮症に対する新たな治療薬として、リツキシマブ(RTX: rituximab、商品名:リツキサンが2021年9月から日本で使用できるようになりました。

その根拠となったDESIRES試験について解説します。日本の4施設で行われた、とても重要な医師主導の第Ⅱ相臨床試験です。

Ebata S, et al. The Lancet Rheumatology 2021; 3: e489-97

 

 

背景

全身性硬化症は、多臓器の線維化を特徴とする自己免疫性疾患である。いくつかの薬剤の有効性は報告されているが、依然として予後不良な疾患である。

全身性強皮症では、B細胞の活性化の異常が確認されている。抗CD20モノクローナル抗体であるリツキシマブを投与することで、B細胞を抑制し疾患挙動を制御できる可能性がある。

 

研究目的:全身性硬化症におけるrituximabの有効性と安全性を検討すること

 

 

方法

日本国内の4つの病院で行われた、医師主導型の二重盲検無作為化プラセボ対照試験。

対象:2013年米国リウマチ学会および欧州リウマチ連盟の全身性硬化症の分類基準を満たした全身性強皮症のうち、以下の基準を満たす患者。

  • 20~79歳
  • modified Rodnan Skin Score(mRSS)が10以上
  • 生存期間が6カ月以上見込まれること
  • 登録前の2週間以内にプレドニゾロン10mg/day相当が投与されていない
  • 登録前の4週間以内に、抗線維化薬、他の治験薬、免疫抑制薬、静脈内免疫グロブリン、イマチニブが投与されていない

主な除外基準

  • 肺高血圧症の合併、全身性強皮症に伴う重篤な合併症がある患者
  • 肺活量(%VC)が60%未満
  • 肺拡散能力(%DLCO)が40%未満
  • 過去2年以内にシクロホスファミドが投与された患者

 

今回、対象となった患者を、リツキシマブの静脈内投与(375mg/m2)またはプラセボの週1回、4週間投与に1対1でランダムに割り付けた。

 

主要評価項目:試験治療開始24週後のmRSSの絶対変化量

 

光る電球のイラストmRSSとは皮膚硬化の指標で、手や足、顔や胸部などの17か所を0-3点(点数が大きいほど皮膚硬化が強い)で点数化し、合計51点で皮膚硬化の程度を表す指標です。

 

結果

2017年11月28日から2018年11月6日の間に、80人がスクリーニングされ、56人(70%)が登録され、ランダムに割り当てられた。

  • 患者の51人(91%)が女性。
  • 罹患期間は約5年(リツキシマブ群が58.5ヵ月、プラセボ群が52.0ヵ月)
  • 間質影肺炎の合併は約90%(リツキシマブ群が89%、プラセボ群が88%)
  • リツキシマブ群28人中27人(96%)、プラセボ群28人中22人(79%)が、割り付けられた治療を少なくとも1回受け、24週間のフォローアップを完了した。

 

 

試験治療開始後24週目のmRSSの絶対変化量は、リツキシマブ群がプラセボ群よりも優位に低かった(リツキシマブ群 -6.30、プラセボ群 2.14、p<0.0001 )。

 

24週目の努力肺活量(%FVC)は、リツキシマブ群がプラセボ群よりも優位に改善した(リツキシマブ群 +0,09%、プラセボ群 -2.87%、p=0.044)。

 

 

有害事象は両群で同様であり、リツキシマブ群28例中28例(100%)とプラセボ群26例中23例(88%)に発現した。

  • 治療中止に至った重篤な有害事象は各群1例ずつ発生した(リツキシマブ群ではアルブミン減少、プラセボ群では胆汁酸酵素増加)。
  • 最も多かった有害事象は上気道感染で、リツキシマブ群11例(39%)、プラセボ群10例(38%)に発生した。
  • 追跡調査中の死亡例はなかった。

 

 

<まとめ>

全身性強皮症に対するリツキシマブの皮膚硬化に対する有効性が明らかとなった。本研究の結果をうけ、2021年9月から日本で全身性強皮症に対してリツキシマブが使用可能となっています。

呼吸器的なポイントは大半が間質性肺炎を合併しており、除外基準に低肺機能が含まれている点です。

 

 

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