2021年に間質性肺炎に伴う肺高血圧症にはじめて有効性が確認された吸入トレプロスチニルの試験結果が報告されました。
今回その後の追加解析の結果がAm J Respir Crit Care Medに報告されています。
背景
間質性肺炎合併の吸入トレプロスチニルのINCREASE試験は、主要評価項目である6分間歩行距離の変化を16週目で達成し、重篤な有害事象はないことも確認された。しかし、同一患者における複数のイベントの発生率は不明である。
研究目的:このポストホック解析では、吸入トレプロスチニルの継続投与が、複数の疾患進行イベントの頻度や臨床的意義に及ぼす影響を評価した。
方法
INCREASE試験の登録患者を対象に、16週間の試験期間中に、疾患進行イベントを解析した。
疾患進行イベント定義
- 6分間歩行距離の15%以上の減少
- 肺疾患の増悪
- 心肺疾患による入院
- 肺移植
- 努力肺活量(FVC)の10%以上の減少
- 死亡
結果
疾患進行イベントは、トレプロスチニル吸入群で147件(89/163例、55%)発生したのに対し、プラセボ群では215件(109/163例、67%)であった(p=0.018)。
疾患進行の各要素の発生率は、トレプロスチニル吸入群で低い結果であった。
- 6分間歩行距離の減少(45件 vs 64件)
- 肺疾患の悪化(48件 vs 72件)
- 心肺入院(23件 vs 33件)
- 努力肺活量(FVC)の低下(19例 vs 33例)
- 死亡(10例 vs 12例)
さらに重要な点として、トレプロスチニル吸入群は、プラセボ群と比較して、疾患進行イベントが複数起こる率も少なかった(35例(22%) vs 58例(36%)、p=0.005)。
吸入トレプロスチニルを投与された患者は、プラセボと比較して、最初のイベント後にさらなる疾患進行のイベントを経験する可能性が有意に少なかった。臨床現場において、疾患進行の発生にもかかわらず吸入トレプロスチニルを継続投与することを支持できる結果かもしれない。