肥満パラドックスに関してはようやく間質性肺炎の領域でも議論されるようになりましたが、その真偽はまだ議論があります。今年のChest誌に、脂肪組織と間質性肺炎に関する報告です。
背景
肥満は拘束性換気障害と関連し、努力肺活量(FVC) が早く低下することが知られている。この関連は機械的な要因のみによるものではなく、脂肪由来のメディエーターによる直接的な肺傷害を反映している可能性がある。
研究課題:脂肪組織は間質性肺炎の病態に関与しているか?
研究デザインと方法
地域在住の成人の大規模多施設共同研究において、心膜、腹部内臓、腹部皮下脂肪組織のCT測定値と高吸収領域および間質の異常陰影(ILAs)の関連を、多変量調整モデルを用いて評価した。また、脂肪沈着部の範囲とFVC、肥満や炎症のバイオマーカーとの関連性を評価した。
ILA: interstitial lung abnormalities
結果
心膜脂肪組織量が2倍になるごとに、
- 高吸収域が63.4 unit増加(95%CI: 55.5-71.3)
- ILAの可能性が20%増加(95%CI: -2%~50%)
- %FVCが5.5%減少(95%CI: -6.8~-4.3%)
と関連があった。
さらに、内臓脂肪組織の面積が2倍になるごとに、
- 高吸収域が41.5 unit増加(95%CI: 28.3~54.7)
- ILAの可能性が30%増加(95%CI: -10%~80%)
- %FVCが5.4%減少(95%CI: -6.6%~-4.3%)
と関連があった。
IL-6やレプチンもこれら脂肪組織や高吸収域との関係が一部示唆されているようです。
<まとめ>
CT画像における脂肪組織の定量化により、ILDの予防のための新たなターゲットとして脂肪率が特定され、脂肪組織が肺に及ぼす非機械的作用の重要性が明らかになった。