間質性肺炎を詳しく調べる際の検査の一つに、外科的肺生検があります。
外科的肺生検は、実際に手術で肺を生検する手法です。現在では、基本的には胸に2cm程度の2つか3つの小さな切れ目(ポート)を入れ、胸腔鏡を使用して肺の一部を切除する、ビデオ補助胸腔鏡下外科的肺生検(VATS; video-assisted thoracoscopic surgery)という手法を用いて行うことが多いかもしれません。
注意点として、これは間質性肺炎の治療、ではなく診断や病態把握のための検査です。
もちろんとても重要な検査であり、必要時には提案していますが、やはり急性増悪をはじめとした術後合併症の懸念はあります。
そこで、2006年にこの外科的肺生検の術後の急性増悪についてまとめた研究が日本から報告されました。
結果
術後の急性増悪の頻度
この報告では、236例の間質性肺炎患者に対し外科的肺生検(開胸99例、胸腔鏡137例)を行ったところ、5例(2.1%)で術後の急性増悪を発症しました。
各疾患ごとでは、
- 特発性肺線維症(IPF):3例/80例(3.8%)
- 非特異性間質性肺炎(NSIP):1例/28例(3.8%)
- 特発性器質化肺炎(COP)::1例/11例(9.1%)
であったようです。
急性増悪発症のタイミング
全例が術後18日以内に急性増悪を発症した。
- 48時間以内が2例
- 48時間から18日目までに3例
特に重要なポイント
この報告で特に重要であったのは、術後の急性増悪は手術の対側肺が優位であったという点です。
図. 術前(左側)と術後(右側)の肺病変の広がりの比較(文献より引用)
なぜ、術後の急性増悪は手術の対側肺で優位となるのか。一つの仮説としては、人工呼吸器関連肺障害が挙げられています。
<まとめ>
間質性肺炎の精査のため外科的肺生検を行うが、術後急性増悪は約2%程度で発症しうる。特に注目したいのは、術後急性増悪は手術と対側肺で優位であったという点である。