間質性肺炎の合併症の一つに肺高血圧症がありますが、現状ではこの肺高血圧症に対する有効性の確立した治療薬はありません。
しかし、2021年に吸入トレプロスチニルの安全性と有効性を評価した研究結果が報告されました(INCREASE study)。
方法
対象:間質性肺炎を背景に持つ肺高血圧症の患者
超音波ネブライザーを用いて1日4回トレプロスチニルを吸入(最大12回)する群とプラセボ群に割付。
主要評価項目:16週までの6分間歩行距離の変化量
結果
トレプロスチニル吸入群はプラセボ群に比較して、6分間歩行距離を有意に改善しました。
- 変化の最小二乗平均差は31.12m、95%信頼区間:16.85-45.39
さらに、トレプロスチニル吸入群は、プラセボ群に比較して、
- NT-proBNPは低下し、
- 臨床症状の悪化も少ない割合でした。
トレプロスチニル吸入による副作用は、のどの刺激感(12%)や口喉の痛み(11%)はプラセボ群に比して少し多い傾向にあったようですが、特に有意に多い重篤な副作用はないようです。
<まとめ>
これまで間質性肺炎合併の肺高血圧症に対する有効性の確認された薬剤はありませんでしたが、今回初めて有効性の確認された薬剤が報告されました。この結果をうけて、今後この薬剤が日本でも使用できるようになればと思います。
(最終アップデート:2022年1月15日)