急性増悪:1993年に日本から初めて報告された疾患概念

特発性肺線維症(IPF)は、通常は慢性かつ進行性の経過をたどる疾患です。

この特発性肺線維症の経過中に、新たな肺の影の出現とともに呼吸不全が急速に悪化することがあり、急性増悪(acute exacerbation; AEと呼ばれています。

この特発性肺線維症の急性増悪は、1993年に日本から初めて報告された疾患概念です。

Kondoh Y, et al. Acute exacerbation in idiopathic pulmonary fibrosis. Analysis of clinical and pathologic findings in three cases. Chest 1993;103:1808–12.

1993年の報告で用いられた急性増悪の定義

本研究で用いられた急性増悪の定義は以下の通りです。

  1. 数週間以内の経過で悪化する呼吸困難
  2. 胸部レントゲン写真で新たに出現したびまん性の肺野陰影
  3. 酸素化の悪化(PaO2/FiO2<225)
  4. 明らかな感染がないこと

この基準を用いることにより、

  • 急性間質性肺炎(acute interstitial pneumonia; AIP)との相違
  • 特発性肺線維症(IPF)に感染が合併したものとは異なる病態であること

などが示唆されました。

本症例の病理所見ではdiffuse alveolar damage(DAD)パターンを認めています。

この報告から20年以上の時間を経て、2016年には急性増悪の診断基準が国際ワーキンググループから報告されました。
今では、誰もが急性増悪という言葉を用いていますが、その歴史は日本の偉大な医師から始まったことは、とても感慨深いものがあります。

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