タバコ曝露歴のある有症状患者への吸入薬

 

呼吸機能が保たれている患者には、たとえ喫煙歴や症状があっても吸入治療(インダカテロール+グリコピロニウム)での健康関連QoL改善は期待しにくい結果でした。

Han MK, Ye W, Wang D, White E, Arjomandi M, Barjaktarevic IZ, et al. Bronchodilators in Tobacco-Exposed Persons with Symptoms and Preserved Lung Function. N Engl J Med 2022.

 

一言解説

呼吸機能が保たれている患者には、たとえ喫煙歴や症状があっても吸入治療でのQoLは期待しにくい。

 

 

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さらに詳しく解説(専門的な内容です)

背景

タバコの喫煙歴がある人の多くは、スパイロメトリーで評価した気流閉塞がないにもかかわらず、臨床的に重大な呼吸器症状を有している。しばしば慢性閉塞性肺疾患(COPD)の薬物治療を受けているが、この治療法を支持するエビデンスは不足している。

 

方法

タバコ喫煙歴が10pack-year以上あり、COPD Assessment Testのスコアが10点以上(スコアは0~40の範囲で,スコアが高いほど症状は悪い)、スパイロメーターで肺機能が保たれている人(気管支拡張薬を使用した状況でFEV1とFVCの比≧0.70かつ%FVC≧70%)をインダカテロール(27.5 μg)+グリコピロニウム(15.6 μg)またはプラセボのいずれかにランダムに割り付け、を1日2回、12週間投与した。

 

主要評価項目:12週間後に St. George’s Respiratory Questionnaire(SGRQ)スコア(スコアは 1~100 で、スコアが高いほど健康状態が悪化する)が4ポイント以上減少(すなわち改善)し、治療失敗(定義:長時間作用型吸入気管支拡張薬、グルココルチコイドまたは抗生剤で治療した下気道症状の増加)のないこと。

 

結果

合計535人の参加者が無作為化を受けた。

modified intention-to-treat集団(471人)において、治療群227人中128人(56.4%)およびプラセボ群244人中144人(59.0%)でSGRQスコアが4ポイント減少した(差は-2.6%ポイント;95%CI -11.6~6.3、調整オッズ比 0.91;95%CI 0.60~1.37,P=0.65)。

%FEV1の平均変化は、治療群で2.48%(95% CI 1.49~3.47)、プラセボ群で -0.09%(95% CI -1.06~0.89)であった。

最大吸気量の平均変化は、治療群で0.12L(95% CI 0.07~0.18)、プラセボ群で0.02L(95% CI -0.03~0.08 )であった。

重篤な有害事象は治療群で4件、プラセボ群で11件発生したが、治療またはプラセボに関連する可能性があると判断されたものはなかった。

 

<まとめ>

インダカテロールとグリコピロニウムの吸入治療は、閉塞性障害も拘束性障害もないが喫煙歴がありCAT10点以上の患者群において、健康関連QoLを改善させなかった。

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