特発性肺線維症の患者では、急性増悪を発症することが知られていますが、急性増悪に類似した病態として肺炎などに伴う急性呼吸不全があります。その両者の鑑別が大変重要であることを述べた研究が日本から報告されています。
背景
呼吸器関連の入院、特に特発性肺線維症(IPF)の急性増悪(AE)は、IPF患者においてよく認め、死亡率の上昇と関連していることがわかっている。
研究目的:新たに提案された入院患者におけるARD(acute respiratory deterioration)とAE-IPFの枠組みが持つ意味を評価することを目的とした。
方法
225人のIPFコホートのデータを用いて、2008年1月から2017年12月までの初入院を後方視的に評価した。AE-IPFおよびAE以外の何らかの原因でARDを起こした患者の人口統計学と90日死亡率を分析した。
- ARDの定義:呼吸症状の急性の悪化と低酸素血症
結果
対象の225例のうち、ARDで122例が入院した。122例中35例(29%)がAE-IPFと診断され、そのうち11例がtriggered AE(AEのうち31%)であった。
- triggered AEの原因:感染4例、薬剤3例、その他4例
AE以外のARDの原因は肺実質によるものが71例(58%)、肺外によるものが16例(13%)であった。
- 肺実質の原因:肺炎、亜急性の悪化、下気道感染など
- 肺外の原因:気胸、縦隔気腫など
各群の治療内容として、ステロイドはAE-IPFの全例で使用され、肺実質が原因のARDの7%で使用された。90日死亡はそれぞれ46%、17%の結果であった。
<まとめ>
IPFの初回入院の約30%は急性増悪(AE)であり、AE-IPFとそれ以外のカテゴリーとの鑑別や治療や予後の観点から重要である。
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