急性増悪の診断基準

ここでは急性増悪の診断についてまとめます。

急性増悪(AE; acute exacerbation)は、1993年に日本から初めて報告されました。その後、20年以上の時を経て2016年にようやく国際ワーキンググループから診断基準案が提示されています。

1993年の急性増悪の報告に関しては、以下の記事をご覧ください。

目次

急性増悪の診断基準

1993年の症例報告で用いられた診断基準

この研究で用いられた急性増悪の定義は以下の通りです。

  1. 数週間以内の経過で悪化する呼吸困難
  2. 胸部レントゲン写真で新たに出現したびまん性の肺野陰影
  3. 酸素化の悪化(PaO2/FiO2<225)
  4. 明らかな感染がないこと

2004年の診断基準(日本からの報告)

特発性肺線維症の経過中に、1か月以内の経過で、

  1. 呼吸困難の増強
  2. HRCT所見で蜂巣肺所見+新たに生じたすりガラス影・浸潤影
  3. 動脈血酸素分圧の低下(同一条件下でPaO2 10mmg以上)

のすべてがみられる場合を急性増悪とする。

明らかな肺感染症、気胸、悪性腫瘍、肺塞栓や心不全は除外する

(特発性間質性肺炎 診断と治療の手引き 改訂第3版より引用)

2016年の診断基準(国際ワーキンググループからの報告)

改訂定義:新たな広範な肺胞陰影を特徴とする急激な呼吸状態の悪化

  1. 過去あるいは増悪時に特発性肺線維症と診断されていること
  2. 1か月以内の急性の悪化・呼吸困難の進行を認める
  3. 胸部CTでUIP所見+新たに生じた両側のすりガラス影・浸潤影
  4. 心不全や過剰輸液では完全に説明できない悪化であること

Collard HR, et al. Acute Exacerbation of Idiopathic Pulmonary Fibrosis. An International Working Group Report. Am J Respir Crit Care Med 2016;194:265–75.

さらにはこれまでは原因不明、つまり特発性のものを急性増悪と定義していましたが、この2016年の報告から、

  • 原因のあるもの:triggered AE
  • 原因不明のもの:idiopathic AE

と分類する提案もなされています。

f:id:fibrosis:20211020200007p:plain
図. 特発性肺線維症(IPF)の急性呼吸状態悪化を評価するためのアルゴリズム(文献より引用)

間質性肺炎の患者が急性の経過で呼吸困難を呈した場合、このような基準を用いて急性増悪の診断を行っています。

症状は咳や発熱など風邪やCOVID-19と紛らわしいことも多いですが、数日から1週間、1か月程度の間に徐々に息苦しさが悪化している場合は、特に注意が必要です。 

特発性肺線維症の急性増悪の診断基準が2016年に国際ワーキンググループから報告されました。原因のある急性増悪をtriggered AE、従来通り原因不明のものをidiopathic AEとする新たな分類が記述されています。

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